第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉氏。菅氏は官房長官だった2016年、兵庫県丹波篠山市内を訪問し、古民家を再生した事業に取り組んでいる現場を視察したことがある。間近で菅氏を見た人々は、その人柄をどう感じたのか。また市民はコロナ禍と経済難の昨今、新総理に何を求めるのか。地域住民の声を拾った。
菅氏は16年11月、古民家再生事業の視察として、丹波篠山市丸山の地域住民らでつくるNPO法人「集落丸山」(佐古田直實理事長)が運営する古民家宿や篠山城跡などを訪れた。丸山では佐古田理事長(77)らが、限界集落で始まった事業をきっかけに交流人口が増え、耕作放棄地の解消やUターン者が出るなどした効果を紹介した。
住民と車座になって意見交換した菅氏は、自身が秋田県の山村出身であることにふれながら、「丸山の話を聞き、ぜひ見学したいと思っていた。みなさん心ひとつにのびのびと生活されている」と言い、「限界集落は極めて深刻な問題。どのように解決していくか、参考にさせてもらいたい」と話した。
佐古田理事長は、「仕事に厳しい人だと聞いているが、丸山では和やかで、とても気さくな人だった」と話す。
意見交換した際、住民は座布団、菅氏にはいすを用意したが、いすを横にどけて床に座ったことが記憶に残っているという。また、集落を散策している時には、足の具合が悪く、軒先に座って出迎えた90代の女性のもとに駆け寄って握手したそうで、女性は「良い死に土産ができた」と喜んでいたそう。
佐古田理事長は、「床に座り、私たちと目線を合わせてもらったのには感動した」と言い、「出身や経歴を見ても、私たち下々の者の気持ちがわかってくれる総理ではないか」と期待する。
篠山城跡などを案内した同市の酒井隆明市長も、「実直な方という印象。秋田出身ということもあり、根底には地方を思う気持ちを持っておられると信じたい。農村や小さな農業を未来につないで行けるような政策に期待したい」と話した。