兵庫県丹波市内の企業で技能実習中に乳がんが分かり、在留期間を延長して治療・療養を続けていた中国人女性が、9月10日に晴れて家族が待つ故郷に帰国する。経営者の計らいや社員らの献身的なサポートで治療に専念でき、術後の経過は順調。「病気で会社には迷惑をかけてしまったけれど、皆さんに本当に親切にしてもらい助けていただいた」と感謝している。
電子機器製造、氷上製作所(同市氷上町、池田一一代表取締役)の元実習生、王惠さん(37)。機械の組み立て作業に従事していた昨年11月、体に今まで感じたことのない痛みを覚え、会社近くの県立丹波医療センターを受診し乳がんと分かった。「これまでずっと健康だったのに、まさか自分ががんになるなんて」とショックを受けた。
労働規定では、仕事ができなくなれば中国へ帰国となっていたが、池田社長らは「王さんの勤務態度は本当にまじめで、2年半、わが社のために尽くしてくれた」と、日本で治療することもできるとアドバイス。同社の関連会社で実習生として勤務していた夫も「医療水準の高い日本で治療したほうがよい」と勧め、王さんも「早めに治療を受けたほうが良い」と同病院での手術を決意した。
手術を含め4度、入退院を繰り返し、延べ30日以上を病床で過ごした。異国で闘病生活を送る王さんを支えようと、社員らが通院や王さんと病院スタッフの意思疎通を助け、引き続き社宅で暮らせるよう手配した。
実習期限は今年3月で満了したが、抗がん剤治療などを行うため短期滞在への資格変更を2度申請し、在留期間を半年間延長した。
「今はもう大丈夫」と笑顔を見せる王さん。不安だった人生初の入院生活にも「病院の先生や看護師さんは親身になって接してくれた。うれしかった」と振り返り、「帰国後は治療に専念する。元気になったら日本で学んだことを生かしながら働きたい。日本はどこにいても安全で美しい国。機会に恵まれたら、今度はゆっくりと神戸や姫路、そして丹波を観光したい」と笑った。
故郷、陝西省西安市では、先に実習期限を迎え、術後の妻を十分看病できないまま帰国の途に就いた夫と、9歳の息子が待っている。