集落の「お堂」ガイドで後世に 世話の仕方や伝統など 移住者や若い世代のため

2020.09.14
地域歴史

供え物のやり方や解説が詳しく記載されている「川阪 お堂のお世話ガイド」

兵庫県丹波篠山市の川阪自治会(森口繁一会長)がこのほど、集落内にあるお堂の世話の仕方や社殿の伝統などをまとめた冊子「川阪 お堂のお世話ガイド」を作成した。言い伝えでしか知られなかった伝統を、移住者や若い世代にも分かりやすいように文章や写真を用いてまとめ、後世に伝えていくのがねらい。作成に関わった森口武治さん(84)は「素晴らしいものができた」と喜んでいる。

 

冊子はA4判カラーの4面構成。30部を作成した。

お堂で毎月1―3日の間に当番世帯が担う、花入れ内のシキミやサカキの取り替え、神酒や折敷の配置や、年越し前の正月飾り、供え物の仕方など、「お世話」の方法が写真付きで詳しく解説されている。

神戸大学が開設する丹波篠山フィールドステーションの同大学大学院の農学博士、清水夏樹さんが集落内の伝統や歴史に詳しい80代の“先輩”らに聞き取った。

「子どもを守る、旅の安全」(地蔵尊)、「商売繁盛、勝負祈願」(稲荷神社)、「火事や雷から守る」(秋葉神社)など、お堂に祭られた地蔵尊や神社のいわれや御利益、かつて祭られていた場所についての解説もある。

「お堂のお世話ガイド」の作成に関わった自治会員ら=2020年8月20日午後4時35分、兵庫県丹波篠山市川阪で

同集落は、毎年8月18日に行う村祈祷の際、翌年の村祈祷までの1年間、社殿の掃除や供え物など仏堂の世話をする当番世帯を決めている。しかし、人によって世話の仕方が違ったり、地域とのつながりが少ない若い世代や移住者らが伝統を学ぶ機会がなかったりすることが3年ほど前から議論に上がっていた。

そこで清水さんに住民が事情を説明し、冊子の作成を依頼した。

清水さんは「地域の方と話ができるきっかけにもなり、自分自身楽しく作ることができた」とほほ笑み、「今回の川阪集落のガイドをモデルとして、他地区でも同様の冊子を作っていけたら」と話している。

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