プロ野球ドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから2位指名を受けた明石商業の中森俊介君(3年)。プロ球団に指名される瞬間を見届けようと、父の博さん(42)、母の美幸さん(42)、兄の竜太さん(20)の家族3人は、同校の別室でドラフト会議の行方を見守った。ドラフト終了後、美幸さんはハンカチで目頭を押さえながら、「指名の瞬間はほっとし、それ以外は何も考えられなかった」と話していた。
緊張からか当日は「ずっと頭が痛く、気分も悪くて吐きそうでした」と苦笑い。さらに1週間ほど前からは「5巡目、6巡目の指名が終わって、みんな呼ばれているのに息子だけ呼ばれない」という悪夢にさいなまれ続けていたという。「会見のとき、シュンが親への感謝の気持ちを述べていたときにはほろっときました」
3年前、生まれ育った故郷・兵庫県丹波篠山市から愛息を明石市へ送り出した。「さみしかったけれど、小学生のころから『高校は家から通えない、強いチームに行く』と言っていた」と言い、野球小僧の背中を押した。
毎週金曜日になると、洗濯や布団のシーツ替え、マッサージをするため、俊介君の下宿先に通った。「基本、自分の洗濯物は自分で洗っているけれど、私が行く金曜日だけは、『洗ってください』と言わんばかりにボンッと置いてあった。一から十までお世話をしました」と笑っていた。
博さんは「わが子じゃないような、夢心地だった」と、指名を待っていたときの心境を振り返る。「ドラフト中はずっと『ナ』行が言われるのを待っていた。けれど、息子が指名されたときは偶然、何も考えていなかった。『心で念じない方が来るのか』と思った」とほほ笑んでいた。
俊介君が帰省した際には、いつもキャッチボールの相手をしていたという竜太さん。「けっこうガチのキャッチボールです。いつも『して』って言われるので仕方なく」と笑う。
2年の秋ごろ、メジャーリーガーのダルビッシュ有投手や前田健太投手のユーチューブをよく見ていたという俊介君が、「カットボールが投げられるかもしれんから」と専属捕手の竜太さんを投球練習に誘い、2人で新球種の習得に励んだ。「使えるなあ」と手応えをつかんだ俊介君はその後の大会で、カットボールを実際に使っていたという。
「もしまたキャッチボールの誘いがあっても、ちょっとお断りですかね」と笑っていた。
家族からの愛を受け、俊介君は憧れのプロのマウンドに上がる。美幸さんは「小さいときからコツコツと練習して、確実に上がっていくような子なので、一つひとつ目標を持っていってほしい」、博さんは「スタートラインにようやく立てた。あとは努力して結果や実績を積んでいってもらいたい」とエールを送っていた。