新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、兵庫県丹波市内の各地で五穀豊穣に感謝する秋祭りがこのほど、縮小開催された。神事のみというところが多い中、工夫をしながら神輿を出す神幸祭を行うところや、子どもの楽しみに子ども神輿を出すところもあった。
ご神体を唐櫃に移し巡行
同市春日町黒井の兵主神社(村山勝一宮司)は、神輿の代わりに唐櫃に御神体を移し、黒井のまちを巡行した。旗持ちの自治会長や奉賛会の役員ら約20人が、伊勢参りのふれ囃子のテープを流しながら、奉賛委員の臼井靖則さん(65)と中川恭治さん(65)が担い棒を前後で担ぎ、唐櫃を運んだ。
テープの音が聞こえると、軒先に「御神燈」の提灯を提げた家から、家人が門まで出て来て、「ご苦労様です」と頭を下げ、ご祝儀を手渡していた。
例年は、神輿と太鼓みこしが5基、子ども神輿1基の7基がにぎやかに練り歩くが、今年は唐櫃巡行のみ。吉兼久代表総代(78)は「祭り開催に抵抗を感じた氏子もあったかもしれないが、年に1回、五穀豊穣に感謝する祭りを簡素化してでもできて良かった」と話していた。
マウスシールド着け神輿巡業
同町野村の春日神社は、神輿を巡行。野村地区の自治会長や氏子ら約30人が、礼服や法被に感染防止のマウスシールドを着け御旅所まで静かに歩いた。
大きな鳥居がある御旅所で神事。神主の河上仁之さんが、中世には春日町全域から11基の神輿が同御旅所に集まり秋祭りが営まれていたが、戦乱で途絶えたなどと、同神社に伝わる巻物の中身を読み上げ、役員らが玉串を捧げた。
野村区自治会長の畑正幸さん(68)は、「由緒ある神社の秋祭りで、簡素化しても神事だけは続けたかった。何でもコロナでとりやめるのではなく、地域の文化が残り、次の世代に継承されていけばと思う」と願っていた。
例年は野村区の5自治会を朝から夕方近くまでかけて巡行するが、今年は約1時間に縮小した。
子ども神輿「みんなで楽しい」
同市青垣町栗住野自治会(66戸)は、公民館事業で子ども神輿を出した。「しなかったら、行事がなくなるばかり」(岸田徳治公民館長)と実施。保護者が叩くふれ太鼓を先頭に、子ども会員の小学生14人のほか、未就学児や大人も手伝って、集落内を練り歩いた。
同自治会は、蘆井神社にある神輿の傷みがひどく、巡行はしばらく行っていない。境内で祭礼を執り行い、神輿代わりに子ども神輿が巡行した。小学6年生の小田泰生君は「みんなで声を出して楽しい」と、大きなうちわで下級生たちを仰いでいた。