兵庫県丹波篠山市の丹波篠山観光協会(堀成志会長)は、市内在住者が市内の宿泊施設を利用した場合、政府の観光推進事業「GoToトラベル」の割引に、さらに割引や特典を加える企画「丹波篠山マイクロGoToキャンペーン」をスタートさせた。“本家”GoToを巡っては市内でも全国的な動きと同様、割安感を求めて高級旅館や、新型コロナウイルス感染を懸念して一棟貸しの宿に利用が集中。一方で、「効果はそれほどない」という旅館があるため、同協会は「マイクロ―」を通して市民に地元の良さを再発見してもらい、宿泊施設へのGoToの“恩恵”の分散を狙う。GoToを巡る市内の状況を調べた。
「マイクロ―」には現在、同協会に加盟する11軒の宿が参加。本家GoTo終了までの期間、市民や市民を代表者とするグループが参加店を利用した場合、本家GoToの割引(35%)と地域共通クーポン(15%)に加えて、宿それぞれが料金割引のほか、料理のランクアップや朝食無料などのサービスを行っている。
行政からの助成はなく、サービスは各店の“手弁当”。負担が大きくならないよう、「マイクロ―」の利用を稼働率の低い平日に限定するなど、それぞれ工夫を凝らす。
GoToトラベルに先駆けて県が7―8月にかけて行った「Welcome兵庫キャンペーン」でも、貸し切りタイプの店などに集中し、料理旅館への影響が薄かった。一方の宿側からは市外の宿泊者が増えることでコロナの感染源になることを恐れる声もあったことから、同協会は本家GoToに合わせて市民限定の企画を打ち出すことで、市民、宿双方が安心感を持って宿泊を楽しめるようにと考えた。
同協会は、「市内の宿は、市民にとって“一番近くて遠い宿”。けれど、どこもすてきで、市外の人はこのために来ているのか、と実感できる。市外に旅行に出かけることを控える人もいる。GoToが市内でも使えることや、『マイクロ―』を使って市内を旅行し、魅力を再発見してもらえる機会になれば」と期待する。
◆週末はほぼ満室 一棟貸しに人気
一方、コロナ禍で冷え込んだ観光業界のカンフル剤として始まった本家GoTo。割引率が大きいため、観光客の思考は、「普段なら手が届かなかったところに泊まりたい」となり、高級宿が選ばれるケースが多い。
市内でも同様の傾向で、「丹波篠山 近又」は、「予想以上の反響」と言い、黒枝豆やマツタケが旬を迎え、また11月以降のぼたん鍋シーズンもあって週末はほぼ満室となっているほか、平日でも昨年と比べて宿泊者が増えているという。
「もともとリピーターの方が多く、『今年は安く利用できる』といった声を聞いている。加えて新規の方もおられ、GoToの影響を感じている」と話す。
古民家を再生した「篠山城下町ホテルNIPPONIA」や、「福住宿場町ホテルNIPPONIA」を運営する「バリューマネジメント」によると、近又同様、週末は年末まで満室。平日は空きがあるものの、昨年度比で見てもかなり伸びているという。
人気の理由について、同社は、「高単価のため割安感があることや、都市部から近い田舎にあること。そして、分散型の宿泊施設であること。実質一棟貸しのような形で楽しんでもらえるので、現在のトレンドに当てはまっていると思う」と話す。
また「コロナを受けて、みなさんが求めるものが変わった。『何でもいいから』から、『せっかくだから』が前につくようになった。ピンチをチャンスに変えて地域の価値を伝え、今後の旅のあり方、古き良き場所、人の温かみ、地産地消を広めていきたい」と言う。
◆割安感少なく 影響弱い旅館も
高級宿、一棟貸しが好景気となる一方で、それ以外の料理旅館への影響は薄い。
ある宿は、「1泊2食付きで1万数千円なので、割安感を感じてもらいにくいようだ」と言い、「もともと年齢層が高い人の利用が多かったので、稼働率はかつて経験がないくらい悪い。GoTo対象になってはいるが、思ったほど選ばれない」と話す。
別の宿も、「GoToでは数組利用していただいたが、例年と比べると全然。観光客が増えるなど勢いは感じているものの、うちのような小さいところにはあまり影響がなさそうだ」と話す。歓送迎会などの宴会が激減していることも大きな痛手となっているという。
共に「マイクロ―」の対象になっており、さまざまなサービスを用意して市民の利用を待っている。
「マイクロ―」の参加店やサービス内容など詳細については、市公式観光サイト「ぐるり!丹波篠山」で。