仁王さんがまさかの受難―。兵庫県丹波市山南町谷川の古刹・常勝寺の仁王像にキイロスズメバチが巣を構え、にらみをきかせた頼もしい守護神の表情を異形のものへと変えてしまっている。
巣を構えられたのは、朱塗りの仁王門に安置されている口を結んだ吽形(うんぎょう)像。中空構造になっている仁王像の内部にハチが巣をつくり、どんどん増築されて大きくなり、巣の一部が両眼と、右の首下からあふれ出したもよう。
仁王の目玉が大きく飛び出しているようにも見え、少し不気味。無数のハチがひっきりなしに飛び交い、巣はまだまだ大きくなりそうだ。
8月下旬、同寺に毎日参拝しているという近隣住民から「ハチが目の中から出入りしよるで」と連絡があった。経年劣化でガラス製の眼球が両眼とも脱落して奥へとずれ、すき間ができていた。
山際に建つ同寺では毎年、季節になると軒下にスズメバチが巣をつくり、そのたびに駆除してきたが、仁王像に巣を構えたのは初めてという。
山門にロープを張るなどして参拝者に注意を呼び掛けている宮崎実康住職(55)は、「駆除のしようがない。隣に立つ阿形像が『ああ…大変なことになった』と、吽形は『うーん』とこらえているように見える。冬になると巣は空っぽになるので、気の毒だがそれまで頑張ってほしい」と言い、「これからモミジの季節を迎えるので参拝に来ていただきたいが、仁王像の付近だけはご注意を」と話している。