兵庫県丹波篠山市遠方にある貸し別荘「アンの里」でこのほど、ミニ鉄道の「開通式」があった。「庭先でSL(蒸気機関車)を走らせるのが長年の夢だった」というオーナーの田中茂実さん(71)が、SLに詳しい知人の協力を得て、本物さながらの線路を1年がかりで敷設。田中さんの知人や地元住民、鉄道ファンら約50人が詰めかけ、開通を祝った。乗車した参加者たちは「懐かしいなあ」「夢心地や」と笑みをこぼしながら、童心に帰っていた。
車両は型式「C21」のミニSL(全長約1・8メートル)と、イギリスのディーゼル機関車がモデルとなっているミニ電車(同約1・2メートル)の2台。共に実物の10分の1サイズ。別荘を囲むように敷設された全長100メートルのレールの上を、蒸気を上げながら疾走した。コース途中には手作りの赤い鉄橋や実際に警報音が鳴る踏切警報器なども設置した。
「開通式」は「せっかくなら地元の皆さんにも喜んでもらおう」と企画。田中さんが運転する車両に夢中になり、10回ほど乗車する子どもの姿も見られた。乗車した女性(35)は、「思ったより速くて大人も楽しめた」と笑顔だった。
鹿児島の工業高校に通い、「昔からラジコンや飛行機などが大好きだった」という田中さん。各地のミニSLのイベントに足を運ぶうち、趣味で自宅にミニSLを持っている田渕精一さん(60)=同県丹波市氷上町=と知り合った。昨年10月に神戸で開かれたイベントの際、妻の洋子さん(75)から「夫の長年の夢をかなえてあげてほしい」と頼まれた田渕さんは、田中さんの夢を後押しすべく「アドバイザー」となった。
ミニSLは今年1月にオークションで購入。ミニ電車は田渕さんの知人を介し、6月に購入した。
田渕さんが週に1度は足を運び、車両を庭で走らせるために路面を平らにする盛り土や整地、鉄橋作りなどを行い、田中さんも作業を手伝った。数百点もの部品がある車両の組み立ては田渕さんの知人、井上仁司さん(64)=同市市島町=が担った。
「皆さんが喜んでくれて難儀して作ったかいがあった」と田中さん。今後、偶数月の第1土曜日に乗車体験会を催していく予定という。「このミニ鉄道が、人と人とをつなぐジョイントになれば」とほほ笑んでいた。