「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」(10―16日)に合わせて開催されたパネル展が16日まで兵庫県丹波市の氷上住民センターであり、会場に北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者(特定失踪者)の2人、同市出身の桑村一二三さん(66歳、不明当時21歳)と西安義行さん(55歳、同21歳)の親族が訪れ、「どんなささいなことでも」と情報提供を呼びかけ、問題の早期解決を訴えた。
桑村さんの姉、中里安子さん(69)は、「事件から年月がたってしまい、年々難しくなってきているが、どんなことでもよいので情報提供を」と訴え、「弟は元気で活発な人だった。失踪するような動機はなかったはず。本人もきっとふるさとに帰りたがっている。拉致だとしたら許せない。でも、とにかく元気でさえいてくれたら」と複雑な胸の内を語った。
西安さんの母、久子さん(81)と妹の圭子さん(53)もパネル展を訪れた。久子さんは「運動も勉強も好きで、年下の面倒をよく見る優しい子だった。なぜこんなことになってしまったのか、理由を知りたい」と話した。
圭子さんは「『息子の夢を今でもよく見る』と話していた父も2年前に他界。せめて母が元気なうちに帰ってきてほしい」と焦りを口にし、「蓮池さんら5人は帰国されたが、それで良かったというのではなく、拉致被害者全員が帰国しないと解決には至らない。長らく拉致問題に進展がない。兄が自由のない国でどのように暮らしているのかが気掛かり」と心配していた。
桑村さんは、1975年9月、勤務先の兵庫県姫路市内の飲食店を出た後、行方不明になった。身長約162センチ。西安さんは、87年3月15日、友人と京都府舞鶴方面へドライブに出掛け、帰宅途中にJR綾部駅前で友人と別れた後、行方不明になった。身長約176センチ。右鎖骨骨折の治療痕がある。眼鏡を使用している。
政府は17人(5人は帰国)を拉致被害者と認定。警察庁はこのほかにも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案として、行方不明者875人(県内36人。12月1日時点)に関して捜査を続けている。
県警ホームページ(「兵庫県警察 拉致問題」で検索)。