「公約・商品券」どう評価? 「全市民に商品券2万円議案」否決 市議に決断理由問う

2021.01.21
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兵庫県丹波市の林時彦市長が選挙時に掲げた公約、現金5万円給付を2万円分の商品券交付に修正し、市議会に提案したが、否決された。丹波新聞社は、市議にアンケートを実施し、公約変更を許容するか否かと、新型コロナウイルス対策として2万円分の商品券を交付する施策が、施策として妥当かどうかを聞いた。自身の考えが表中のどの位置にあるかを記してもらい、その理由を回答してもらった。公約変更は、容認する議員が過半数あったが、商品券交付施策を妥当でないと強く否定する議員が多かった(順不同)。

賛成は全体で評価、反対は「許されない」強く

市議会議員の考えを落とし込んだ表

中央縦軸を挟んで左右が、商品券給付の妥当性。中央横軸を挟んで上下が、公約変更が許されるか、許されないか。中心から離れ、端に行くほど、気持ちの度合いが強くなる。

交付に賛成した議員9人(〇)は、公約変更は「許容」、または「どちらでもない」とし、商品券交付施策は妥当と判断した。表の中央部分に寄っており、水道料金の基本料減免廃止を財源にしたことなど、問題点はあるものの許容し、議案に賛成したことが伺える。

近藤、奥村両氏は公約変更の許容度、2万円施策の妥当性とも高く評価した。

一方、交付に反対した議員10人(●)は、公約変更は許されず、商品券施策も妥当でないと考える議員が多く、対照的。

表の左上に「●」が集まり、「許されない」「妥当でない」気持ちが強く現れている。谷水、太田一誠両氏で特に強くなっている。

小橋、藤原、須原の3氏は公約変更は許容する立場を示した。

垣内廣明議員は病気欠席した。

【反対】「優先すべき対策ある」

谷水雄一氏
「公約通り5万円を議会にはからず修正したのは、政治不信を招く。商品券2万円分の配布は、財政破綻のきっかけをつくる。財政難になるような地域に魅力を感じ帰ってくるのか。帰ってきづらいまちになる。水道基本料減免の取りやめは議会軽視。新庁舎建設凍結も一方的決定だ」

太田一誠氏
「公約説明をいつするのか待っていたが、このタイミングではない。もっと最初にするべき。コロナ対策は他の計画と共に行うべき。今後も話し合う際に多様な議論の受け入れを尊重して進めてほしい」

須原弥生氏
「公約と施策を重ねて評価すること自体どうかと思うが、公約の変更はあり得ると考え、その公約を果たそうと努力するものと捉えている。コロナ対策として2万円商品券配布以外に適切な使途はないのか再考してほしい」

吉積毅氏
「公約変更とはみていない。公約ではなく新たな提案と捉えている。給付対象は絞るべき。丹波市の施策としては、適切でない」

小橋昭彦氏
「状況に応じて公約を変更するのは当然必要なこと。商品券施策は、(1)本来優先すべきコロナ対策がある(2)財政の硬直化を生み今後の危機対応ができない(3)本当に必要なところに交付すべきという点で妥当性に欠ける。逆に言えば、(1)優先すべき対策の後で(2)予算規模の縮小(国の交付金内)(3)対象を必要なところに絞って行うなら許容する」

広田まゆみ氏
「第3波が強くなっている今、コロナ感染の拡大を防ぐための政策を第一に行うべき。同時に生活困窮の方々(緊急小口貸付、総合支援資金などの利用者)を優先に支援すべき」

酒井浩二氏
「(1)財政部のシミュレーションによると、市財政は令和3年度以降、赤字に転ずる中で、商品券2万円分配布を現時点で市民全員に行うべきでない。(2)限られた財政の中でコロナ対策をまずは必要とする人に、限定的に行うべきだ」

足立嘉正氏
「公約変更は市長の苦渋の判断と思うが、コロナ対応のための予算をゼロにしてまで全市民に商品券を配布する必要があるのか。緊急事態宣言下において、もうお金がないので、市民のために何にもできないでは困る。医療従事者やこども園などの従事者に手厚く支援すれば良い。プレミアム商品券事業は計画で2回予定されていたので、もう1回実施すべきだ。将来の財政も良く見据えなければ市民に負担ばかり。水道基本料減免は市民に寄り添わないのか?」

太田喜一郎氏
「(1)公的に財政事情が考慮されていない(2)臨時交付金実施計画では、プレミアム商品券などの発行事業が2回予定され、13億円の経済効果が見込まれていた」

藤原悟氏(議長)
「予算決算常任委員会で否決された結果と、(本会議で)可否同数の場合の『現状維持の原則』に従った。私が(市民から)声を聞いた範囲では、2万円分の商品券は不要、もっと困っている人に使ってほしいという声が多かった」

【賛成】「市内の経済効果ある」

大西ひろ美氏
「コロナ禍において、本当に支援を必要とする人への支援が必要と考えている。エッセンシャルワーカーへの慰労金も必要。公約とは別に考え、この議案に対し、市民への生活安定への支援としての有効性を考えた。全市民を対象としており、支援を必要とする人への支援とは違うとも感じたが、商品券を不要と思われる方は拒否できることにより、公平性にもつながるという考え方もある。今の有事の中、スピード感が平時に増して必要。交付金の活用期限が3月末となることも考え、今タイムリミットでの提案と考え、ベストではないがベターと総合的に判断した」

奥村正行氏
「コロナ禍の中、生活に不安を持たれている方がおられることは事実だ。今回の提案は、商品券を配ることになっても、不要の意思を示せることが良い。行政の市民向けサービスはスピード感が大事。3月に実行される今回の提案は、その点もよく考えられている。公約の変更(私は変更とは思わない)、見直しも当然、可と考える。あと4年ある」

西本嘉宏氏
「公約変更は場合によってはあり得る(全てにわたって良いというわけではない)。先の議会で議決した水道料金基本料減免を取りやめるのは、議会軽視と言わなければならない。コロナ対策としていたもので、必ず復活させなければならない」

渡辺秀幸氏
「政治家にとって公約を実現すべく行動するのは一般的なことだ。商品券2万円は、その一つの現れだろう。(前市長の)谷口市政の時代から、もう少しコロナ対策を深く予想しておくべきだったかもしれない。国はまた交付金の用意があるようなので、より深い対策を企てておくべきだろう。林市長の今後に期待する」

近藤憲生氏
「議員も公約を掲げ立候補し、当選すれば実現に向かって活動する。市長も同じだ。実現できるものばかりではない。市長の公約は5万円支給だけではないのに、それだけがクローズアップされているのは疑問。財源や将来的なことを考えると2万円商品券は妥当」

山名隆衛氏
「現実の丹波市を見据えた施策になったことを評価する。市内の経済効果を考えながら、市民に選択できるところにもアイデアを感じる。緊急事態時だからこそ広くみんなで耐える時と思う」

前川進介氏
「(1)庁舎整備基金の取り崩しがなく若者世代への負担増大を避けられた。(2)同基金に積み立て予定だった予算を商品券に充当するのは民意を反映した筋の通った話。(3)一律平等ではなく、公平に近づいたから(水道基本料免除より良策)。(4)現金でなく商品券にしたことでコロナで疲弊している地域経済の活性化が期待できる。(5)否決すると国に3・5億円近くを返還せざるを得ず、市民サービスの低下を招く」

西脇秀隆氏
「コロナ禍の市民を励ます提案だ」

小川庄策氏
「公約と商品券2万円交付議案は別と考える。2万円分のうち1万円は水道料金の補てんとして、後の1万円はコロナ感染予防として市民の安全対策費用と考えた」

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