「大人に幻滅」「ちゃんとして」 新成人の”ホンネ” 式典延期や社会情勢に何思う?

2021.01.10
ニュース

新成人に送られた成人式延期の通知と、10日に配布される予定だった成人式の冊子

今月11日は「成人の日」―。兵庫県内陸部の丹波篠山市、丹波市できょう10日に予定されていた成人式は、共に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて5月に延期された。選挙権が18歳に引き下げられたとはいえ、本格的に大人の仲間入りを果たす「ハタチ」。成人式延期や原因となったコロナ禍、また現在の社会について何を思うのか。丹波地域在住者や出身者の新成人に”ホンネ”を聞いた。

12月24日に延期が決定した丹波篠山市成人式の実行委員長で、新成人の女性は、「急な決定だったので正直びっくりした」と振り返る。延期が決まった日も新成人でつくる実行委メンバーと式典で行う催しの準備を進めていたところだった。

ただ「報道で感染者が増えていることは知っていた。同級生の多くは市外に出ており、都会から帰ってくることに不安はあった」と言い、「日程が変わったことで、どれだけ参加してもらえるか分からないけれど、なるべくたくさんの人に来てほしい」とコロナ収束と成人式開催へ期待を寄せる。

感染「怖くない」 仕事も授業もオンラインで

京都の大学に通う男性は、「先輩たちは口をそろえて『成人式は楽しい』と言っていた。今まで当たり前のようにできていたことができないのがさみしい。”普通”にしたかった」と嘆く。延期には、「働き出している子もいる時期。集まりは悪くなりそう」と予想する。

コロナに感染した友人もいるそうで、「『熱は出たけどあんまりしんどくなかった。味覚と嗅覚がなくなるだけで、療養先のホテルで楽しい生活を送れた』と言っていました」と言い、「正直、自分でかかる分には怖くないと思っている。誰かにうつすことさえなければ」と本音を明かした。

大阪の大学に通う男性は、試験の日程の関係でもともと成人式に出席する予定はなかった。ただ5月開催であっても感染者が多い大阪からコロナを持ち帰ってしまう可能性を不安視しており、地元で感染を広めてしまう可能性を危惧している。

「延期は妥当だが、5月でもコロナが収まっているとは考えられない。オンライン開催にすべき」と語り、さらに「コロナとの闘いは長期的になるので、外出は自粛し、仕事も授業もオンラインで実施すべき」とも話した。

政治責任果たして 「将来が不安」

神戸市の専門学校に通う男性は、成人式の延期については、「残念だがこの状況では仕方がない。自分がウイルスを持っているかもしれないし、同窓会で出会う友だちが持っているかもしれないし」と話す。

一方、2度目の緊急事態宣言や各種GoToキャンペーン、医療の逼迫など、コロナ禍で右往左往する社会に対する不満が強い。「全ての行動が一歩遅れている。政治家はみんなが払った税金から給料が出ているのに、それに見合った政治活動がされていない。『ちゃんとしてくれ』と言いたい」と憤る。

近く、目指す職業の国家試験がある。「僕は僕で自分がなりたい職業に就き、自分の役割を果たしていきたい。政治家のみなさんも責任を果たして」と訴えた。

東京の大学に通う女性はさらに苛烈だ。

1日あたりの感染者が2000人を超える東京で暮らし、学生生活もままならない中にあっても、「みんな頑張っているのだから」と耐えてきたという。しかし、「菅首相の会食の件や、この期に及んで野党の人が、『政権を取るチャンス』などと言う。いったい何を考えているのか。あんな大人たちがこの国を引っ張っていると思うと、将来が不安でたまりません」と怒る。

「世の中の仕組みや利害関係などはよく知らないけれど、社会を動かしている”先輩”たちのやっていることは理解できないことばかり。コロナ禍までは、大人がやることはおおむね正しいことと思っていたけれど、それが幻想だということに気付かされた。幻滅です」

「いい方法」難しい なぜ都市部は成人式実施?

地元に残る女性は、「経済の大切さ、一方で医療の問題など、どの立場にも理解できるところがある。みんなにとって一番いい方法を見つけるのは難しい」と冷静に分析する。大人の仲間入りを果たしたが、「成人といっても分からないことばかり。かといって責任を避けるのは違う」ときっぱり。「私は悩んでいる人、苦しんでいる人に手を差し伸べられる人になりたい。だからこそコロナ禍の中で、何もできない20歳の自分が嫌になる」と、もどかしい気持ちを吐露した。

また県内で成人式を延期した自治体がある一方で、感染者が多い都市部でも予定通り実施する自治体があることについて、「人が少ない田舎の方が気を付けており、意味が分からない。いろいろおかしいことばかり」と首をひねる。

別の女性は、「オンラインでの成人式開催や中止になっているところもあるみたいなので延期で良かった」と安堵する一方、「丹波篠山市はまだ感染者が少ない。県内では予定通り1月に開催しているところもあるし、やってほしかったなという気持ちもある」と心境は複雑。

周囲ではコロナ禍に翻弄されている友人も多いという。「20歳前後の今しか遊べない人もいる。けれど、思うように外に出ることもできず、『なんでこの時期に大学生になったんやろ』と後悔している友だちが多い。中には海外留学のために、あえて留年しようと考えている子もいる」と話している。

関連記事