兵庫県丹波市の黒井小学校を発着点とする「第5回黒井城トレイルランニングレース」(同実行委員会主催)がこのほどあり、50マイル(約80キロ)の部で、市民ランナーの稲次寿史さん(47)が優勝した。国史跡黒井城跡の整備工事に伴い最後となる大会で有終の美を飾った。登った標高の総計「獲得標高」は8200メートルで、「国内最高峰の難コース」(同実行委員会)。ほぼ一昼夜、丹波市内の登山道を走り続け、招待選手を抑え、19時間40分でゴールした。
招待選手6人を含む39人が、午後6時に黒井小をスタート。稲次さんは、少しの食べ物と水、スマートフォン、緊急時に体を覆うシートなどが入ったリュックサックを背負い、ヘッドライトの明かりを頼りに、暗闇の中を12時間走った。夜明けは、三尾山で迎えた。
7つの関門を制限時間内にクリアする必要があった。補給所では「目が覚め、カロリーが高い」コーラを飲んだ。
スマホでコースを確認する時間的余裕はなく、実行委員会が木々などにつけた、反射材やカラーテープを見失わないよう気を配った。四つんばいで進まなければならない所や、災害の爪痕が残る個所もあった。ゴールは午後1時40分。午後3時が制限時刻だった。
大会2カ月前からは、夜から朝にかけて、多いときは週3日試走、40キロ走る日もあった。「制限時間が厳しかったので、必死だった。きつければきついほど挑戦、走りたい気持ちが湧く。優勝は試走を重ね、丹波の山を知った地の利のおかげ。地元で勝てて率直にうれしい」と喜びを語った。
帰宅し、腕を保護するアームウォーマーを脱ぐと、腕がざっくり切れていた。病院で10針縫った。走り出して間もなく岩場でロープをつかみ損ねて転倒した際に負傷。「強い人に負けたくない気持ちが強く、走っている最中は痛みを感じなかった」と笑った。