子授け祈願も「心のリモートで」 脈々続く村伝統の法要 コロナ禍中も「気持ちに応えたい」

2021.01.31
地域歴史

事前申し込みの用紙を手に“心のリモート”での参加を呼び掛ける飯田住職=2021年1月28日午後1時29分、兵庫県丹波篠山市沢田で

兵庫県丹波篠山市大熊にある「瑠璃寺・薬師堂」で毎年2月11日午前10時から営まれる伝統の「子授け法要」。近年、全国各地から法要に訪れる人が急増しているが、今年はコロナ禍中のため、地元自治会は法要を行うものの、事前申し込み制で、祈祷札などを郵送する方法を取り、当日はお堂を訪れないように呼び掛けている。関係者は、「子どもを切実に望む人のことを思えば、中止にはできないと考えた。法要の時間、それぞれの家で真言を唱えてもらい、今年は“心のリモート”で参加してほしい」と話している。

例年、当日に受け付けした人がお堂などに集まって祈願していたが、「密を避けられない」と判断。事前申し込みの受け付けは2月1―8日。法要を取り仕切る小林寺(同市沢田、飯田天祥住職)に受付用紙を置いており、近隣の人は同寺で申し込んでもらう。遠方など、寺に行けない人は電話かファクス、メールで申し込む。

法要は通常通り行い、申し込んだ人の名前や祈願内容も読み上げる。法要後、祈祷札などを郵送する。

お供えの金額は規定がなく、「お気持ち」。事前に寺に持ってきてもらうか、現金書留で送ってもらう。

法要がいつから始まったかは定かではないが、以前から「知る人ぞ知る子授け祈願」として認知され、毎年、懐妊や安産祈願のほか、願いがかなった報告の「願済」にと、各地から多くの人が訪れている。

もともとは集落の法要だったが、ある産婦人科医が祈願した直後に子を授かったことがあって以来、患者に紹介し、口コミで一気に話題に。近年、報道などもあってさらに参加者が増え、昨年は関東などの人も含めて150人近くの参加があった。

法要では「もっそ」と呼ばれる供物が用意される。木桶の中に、乳房を模したドーム状の蒸し米や、女性器を象徴するわらで編んだ輪が配され、その輪の中には男性器の象徴として徳利が置かれる。ほかに豆腐の串刺しや大根、白豆なども置かれる。

飯田住職が般若心経や薬師経を読経。その後、「オンコロコロ センダリ マトウギソワカ」と、本尊・薬師如来の真言を全員で唱える。

毎年、法要後には「子どもを授かった」という手紙が送られてきたり、昨年は匿名で「これからも法要を続けていってください」というメッセージと共に30万円の寄付があったりしたという。

飯田住職は、「御利益は目に見えないので何とも言えないが」としつつ、「大切なのはお薬師様を信じること。大勢の人の気持ちに何とか応えるため、肝心の法要はきちんと行うので、今年はこの方法でご理解願いたい」と話している。

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