「認知症の人を正しく理解して偏見を持たず地域で支えていこう!」と人々に伝える活動が全国的に広がっている。
認知症の正しい知識を伝える学習会を「認知症サポーター養成講座」という。老人クラブや自治会、職場など、いろいろな団体、小学校や中学校、高校でも講座を開催している。この講座の講師役を「認知症キャラバン・メイト」、講座の受講者を「認知症サポーター」と呼んでいる。
メイト活動で訪れた際、ある男性が「講座を聞いて思い出した。30年前、認知症だった祖母が家を出て行って帰れなくなることを心配して、家族は部屋に鍵をかけていた。祖母は何もわからないと思っていたが、そうではなかった。祖母は、辛く悲しかったに違いない。かわいそうなことをした」と話された。
当時は、社会的にも認知症への理解は進んでいなかった。家族が悪いのではない。「今、孫のあなたが、施錠された部屋で過ごしたおばあさんの気持ちに思いを寄せられたことこそ、深い愛情に違いない」と返した。
講座の終了後には多くの方が「受講してよかった」「少し理解が進んだ」「次はもっと深く知りたい」と感想を寄せてくださっている。とりわけ、小・中学校では高齢者への理解をもとに、認知症の人の気持ちや思いをくんだかかわりについて伝えている。受講した生徒からの感想を一つ紹介したい。
「認知症は怖い病気だと思っていた。絶対なりたくないと。でも、サポーター養成講座で学習して、認知症になっても支えてくれる人がいるんだ、理解し合い、支え合っていけるなら怖くないと思った。」
こう記してくれた生徒の言葉に私は思う。人は、認知症になることより、認知症のために家族や人々が自分から離れていくことがもっとも怖いのではないだろうか。地域で見守り・声かけなど、自分のできることで認知症の人や家族を支えるサポーターが増えてほしい。
寺本秀代(てらもと・ひでよ) 精神保健福祉士、兵庫県丹波篠山市もの忘れ相談センター嘱託職員。丹波認知症疾患医療センターに約20年間勤務。同センターでは2000人以上から相談を受けてきた。