「鳥助け」にやりがい 傷病鳥の野生復帰無償で 「あえて”ドライ”に」

2021.03.02
地域自然

飼養しているメジロに餌を与える堺さん=2021年2月11日午後5時10分、兵庫県丹波篠山市油井で

NPO法人日本バードレスキュー協会(本部・大阪府河内長野市)の立ち上げメンバーで、副理事長を務める兵庫県丹波篠山市油井在住の堺昭生さん(64)が、同県内の傷病鳥を野生復帰させるための保護・飼養活動に尽力している。事故や違法飼育など、さまざまな理由で傷つき、行き場をなくした鳥をボランティアで受け入れている。

交通事故や流出した油の付着、密猟されて狭い籠(かご)の中で飼われるなど、人為的な理由で傷ついた鳥を、持ち込みのほか、警察や動物病院を通じて受け入れている。治療やリハビリを施した後、同法人の会員でもある「バンダー」と呼ばれる鳥類標識調査員が、放鳥可能か判断する。

飼養されているメジロ

同県西宮市に住んでいた堺さんは一昨年6月、購入した丹波篠山市の空き家を同法人の「篠山事務所」として開所し、移住。篠山事務所では現在、違法に飼育されていたメジロ10羽とハシボソガラス1羽の計11羽を保護している。開所後、約30羽を保護してきた。飼養スペースは、鳥の種類や傷病の具合に応じ、小さな籠や、会員らが手作りした2棟のフライングケージなどに分けている。

餌は、マウス、ササミのほか、植物性と動物性の飼料を混ぜた「すり餌」など、鳥の種類によって変えなければならない。

堺さんは「必要以上に人に慣れてしまうと外に出たとき、『人は餌をくれる』と勘違いし、自然界で生きられなくなってしまう。ペットのように話しかけたりはせず、あえて“ドライ”に接するようにしている」という。

同法人は2010年に設立。現在、約150人が所属している。これまでにツバメやイソヒヨドリ、ヤマガラ、フクロウ、ミサゴなど約1000羽を保護してきた。

大阪府内の野鳥を受け入れる本部のほかに、兵庫県内の野鳥は堺さんが営んでいた大阪府の工場の2階で受け入れていた。新たな拠点として、自然が豊かで、県内の会員が手伝いに来やすい丹波篠山を選んだという。

「鳥の保護活動は、まるで人助けのようなもの」と語る堺さん。「鳥を連れてこられるのは心が優しい人ばかり。中には電話口で泣かれたり、見つけた鳥に名前を付けたりしている人もいる。預かるときは『死なせてしまったらどうしよう』というプレッシャーがある」という。それだけに、「放鳥できた瞬間に一番やりがいを感じる。『死なさんと無事に自然に帰せた』とほっとする」とほほ笑んでいる。

一般の人は、野鳥は捕まえたり飼育することは法律で禁止されており、保護した際は、各都道府県の野生鳥獣担当機関に連絡し、指示を仰ぐことが求められている。

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