1本1本の木を大切に
県外の林業事業体に勤めながら、丹波篠山市内の住民や森林所有者からの要望で、裏山や危険木の伐採、所有林の間伐などを行っている。林業家としてもうすぐ3年目。「山や木の所有者だけでなく、代々育ててきたご先祖の気持ちも大切にしながら仕事をしたい」と話している。
川西市出身。公務員を志し、京都府立大学公共政策学部に進学したが、幼稚園から高校までボーイスカウトの経験があるアウトドア派だったこともあり、里山保全に関心を持ち、森林ボランティアをしたり、全国の山に登ったりするうちに、「将来は山に関わる仕事がしたい」と思うようになった。
全国的に地方の山に入る森林ボランティアが増える中、「山の所有者の気持ちを知り、所有者の目線で里山保全を考えたい」と、同大大学院で農業経営学を学んだ。そのフィールドとして選んだのが丹波篠山市大山地区。同市の地域おこし協力隊として3年間活動。里山オーナーや所有者などから生の声を聞き、共有林を長年守ってきた同地区の歴史に触れるなどした。
また同地区の自然環境を生かした事業を企画。住民から参加を募って金山の展望スポットを作ったり、大山小学校の児童が木の伐採から箸作りまでを体験する活動も行ってきた。
活動の中で、「負の遺産と思われがちな山だが、所有者にとっては先祖の財産という気持ちが強い。大山地区で山を大切にするアイデンティティーを残したい」と、林業家になった。「生産性と付加価値の高い林業を模索しつつも、『お疲れさま。大事に使ってもらいやー』と木に対して言えるような、1本1本の木を大切にする職人になりたい」。26歳。