兵庫県丹波市山南町出身の西洋美術史研究家、中川真貴さん(イタリア・フィレンツェ在住)が、印象派を代表するフランスの画家、ルノワールとモネの作品と生涯を解説した著書「はじめてのルノワール」と「はじめてのモネ」を出版した。芸術専門出版社「求龍堂」(東京都)の名画シリーズ「色彩飛行」の創刊号。本格的な美術書ながら、ストーリー性を軸に、誰にでも分かりやすく楽しめる内容を目指した。中川さんは「絵にあまり触れたことがない人にも親しんでもらえ、多くの作品集に触れてきた人には“再発見”があると思います」と話している。
いずれもB5判128ページオールカラー。図版103点を収録している。作品を青、赤、黄、緑、白、黒の色別にまとめる新鮮なアプローチで、画家にとってそれぞれがどんな色だったのかについても深く考察している。
ルノワールとモネは、19世紀後半の美術界に革命を起こした「印象派」の画家。それまで認められていなかった戸外制作を行い、光と大気を色彩で表そうとした印象派の画家たちについて、交友関係や社会情勢を含めて多角的に取り上げた。中川さんは「認められなかった時代に、仲間同士で助け合い、切磋琢磨して生き抜いたことを伝えたかった」と話す。
また作品に登場するモデルの服装から、ファッションの流行や社会情勢を読み解くなど、作品の時代背景が分かるよう工夫している。
中川さんは、1993年からフィレンツェに住み、芸術イベントの企画を主に手掛けるフリーランスのキュレーターとして活動。絵画が描かれた場所を実際に訪れてきたことや、欧州の文化を長年体感してきたことが、画家の思いに近付くことに役立ったという。コロナ禍の影響で、昨年から日本に滞在中で、その期間を生かして約1年がかりで書き上げた。
中川さんにとって初の著書。「作家の思いを引き出し、それぞれの作品の良さをいかに読者に伝えるかというのがキュレーターとしての信条。今後の活動にとってもよいステップになった」と話している。定価各2420円(税込み)。