卓上サイズの若松好評 時代のニーズに合わせて開発 生産者の挑戦で商標登録に

2021.04.17
ニュース

若松の畑で商標登録証を手に「これからも新しいものやちょっと変わったものを栽培していきたい」と話す衣笠さん=2021年4月1日午前3時21分、兵庫県丹波市山南町坂尻で

正月用若松の日本三大産地の一つ、兵庫県丹波市山南町の花き農家・衣笠清貴さん(68)が、若松の新商品「根付娘松」を開発し、新年用に好調な売れ行きを見せた。大手花き卸売会社「JF鶴見花き」(大阪市鶴見区)と共に試行錯誤して完成させたもので、このほど商標登録が完了した。

「根付娘松」は文字どおり、根っこが付いた若松で、卓上に飾れるコンパクトなサイズが最大の特長。一般的な若松の出荷サイズは1メートル以上あるのに対し、地上部分が約40センチと半分以下。小ぶりながら、2―3本の枝付きにし、枝先に近い部分以外は手作業で葉を落として形を整えている。

鶴見花き社によると、常緑の松は生命力の象徴とされ、西日本の京都などでは、「幸せが根付くように」と、新年に根付きの若松(根引松)を門柱の左右に飾る風習がある。

卓上サイズの「根付娘松」

近年では門柱がない家や洋風の家が増える中、「マンションなどでも手軽に飾れる扱いやすい松が作れないか」と、同社が衣笠さんに提案。衣笠さんは最初はイメージが湧かなかったそうだが、「通常は4年かけて育てる若松を、2年目の幼松で収穫すればできるのでは」とひらめいたという。

とはいえ簡単なことではなく、枝を細く保ち、主軸の横に枝が出るよう、作業や肥料を工夫。時代のニーズを捉えた“かわいらしい”新商品が生まれた。20年以上の付き合いがある同社の松本大二郎執行役部長が、「孫や娘のように愛情を注いで育てた小さな松」と、「娘松」と命名した。

2019年11月、同社に出荷したところ、花屋などから追加注文が相次ぎ、500本の予定が5000本売れた。昨年は1万本を出荷した。

松本部長によると、これほどコンパクトに作られた根引松は全国でも他にないという。商標登録は、昨年1月に出願し、今年1月に認められた。「1年がかりだったのでうれしかった」と衣笠さん。日頃から「面白いものを作れないか」と考えており、「従来通りでは先細りになる。これからも新しいものや、ちょっと変わったものを栽培していきたい」と意欲を見せている。

関連記事