兵庫県丹波篠山市監査委員が、市社会福祉協議会が実施している「ふれあい・いきいきサロン事業」の補助金交付について、市内の1自治会に「不透明な支出をしている」と指摘していた件(本紙3月21日号既報)で、社協と市は9日、記者会見を開き、サロンを実施した2015、16年度当時の自治会長の男性に補助金の返還を求め、全額返還されたと発表した。一方、男性は取材に対し、不適切な会計処理をしたことを認めた上で、「地域の役に立ちたいとサロンを開き、自分のお金を持ち出してまでやったこと。私的に流用したことは一切ない」とした。
監査委員の指摘を受けた社協は2月25日から1カ月間、関係者への聞き取りや男性に領収書の提出などを求めた。
一部を除き、領収書は提出されたが、▽昼食代として支出があったものの、住民が「弁当は食べていない」と証言している▽収入にあったサロン運営に対する自治会からの補助金はなかったという証言があった▽講師料の受け取りを講師が固辞したという報告があったが、講師は報酬の話を聞いていない―ことなどから、不透明な支出の疑念がぬぐいきれないとして、補助金の取り消しを決定し、4月2日に2年分の補助金20万4000円の返還を求めた。
これ以上の調査ができないと判断した社協は、篠山警察署に詐欺被害として被害届を提出。1日に受理されている。
7日になって男性は自己資金で全額を返還。社協は事業費を補助している市に16万3800円を返金した。
社協の前田公幸会長は、「チェックが甘く、責任を深く感じている。しっかりとサロンの趣旨を伝え、住民のみなさんと協力していきたい」とした。
一方の男性は取材に対し、講師料の件については、「渡した上で寄付を受けたことにし、自治会内の他事業に回した。同じ自治会の事業なので良いと思ったが、間違っていた」と認めた。
昼食については、「『弁当』と聞かれたら食べていないと言われるが、実際はパンなどの軽食を出した。後日の提出になったが、領収書にもある」と訴え、自治会からの補助金は、「自分がやりたかったことなので自分のお金を入れていた」と弁明した。
また、通常、自治会内の運営委員会がサロンの運営を担うところを、16年度は業務の全てを妻が代表を務める業者に委託していたことは、「運営委の他の方は仕事をされており、実質は自分が一人でやっていた。委託という形をとれば、他の方の心理的な負担を減らせると思った」とし、「利益になるようなことは一切ない」とした。
その上で、「粗雑なやり方をし、誤解を招いたことを深く反省している。社協への申請は通り、補助金も交付されていたので、こんな大ごとになるとは思わなかった」と話した。