兵庫県内では数カ所でしか確認されていない希少植物「トケンラン」が、同県丹波篠山市のヒノキ林で人目に触れずにひっそりと咲き誇っている。まるでウェディングドレスを着た花嫁のような姿で、風に吹かれて静かに揺れる。
草丈30―40センチほど。黄褐色の花を数個つける。和名は「杜鵑蘭」。花の斑点をホトトギス(杜鵑)の胸や腹部の斑紋に見立てたもの。県レッドデータブックで、絶滅の恐れが最も高いAランクに記載されている。
地域の自然愛好団体で会長を務めている樋口清一さん(84)の父・繁一さんが生前に発見した自生地。発見当時から幻のランとされており、「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎氏らも訪れた。
環境の変化で長らく姿を消していたが、6年前、半世紀ぶりに樋口さんが復活を確認。樋口さんは、「父の遺品のように思っている。これからも咲き続けてくれるよう、そっと見守っていきたい」と話している。