農業を通年で学ぶ兵庫県丹波市立「農の学校」を3月に卒業した2人を迎え入れるため、同市氷上町の山本定夫さん(57)・浩子さん(57)夫妻と息子の竜矢さん(33)が、農業会社「山茂」を立ち上げた。カフェ開店や独立就農を目指す2人に、野菜や水稲、果樹の栽培に加え、和牛の世話などを担当してもらい、丹波に根付く足掛かりにしてもらう。山本さんは「いろいろと経験してもらい、2年目くらいから収益につなげてもらえれば」と期待を寄せ、浩子さんは「せっかく夢を持って丹波に来てくれたのだから応援したい」と話している。
同県西宮市出身の西田瑠衣さん(25)と、神戸市出身の岡田優里花さん(26)。無農薬での野菜栽培をメインに、同町内に点在する計30アールほどの農地で、農の学校で1年間学んだ技術を生かす。
夏野菜だけで20種類ほどを栽培する計画で、浩子さんが昨年開店した直売所「ヒロちゃん栗園DE八百屋さん」などで販売する。現在、自作の簡易ビニールハウスをこしらえ苗を育成しており、植え付けに向け準備を整えている。
昨年、2人は浩子さんが営む丹波栗栽培「ヒロちゃん栗園」で、アルバイトとして収穫作業や選別などに従事。それぞれの夢をかなえるには経験や人脈、土地、資金面など多くの課題があることから、まずは丹波で農業に関わりながら足元を固めてもらおうと、浩子さんが“就職”を提案した。浩子さんは「夢をあきらめ丹波を去ってしまうのは寂しい。2人なりのやり方でいろいろ挑戦する場にしてほしかった」と話す。
山本さんは林業「山本木材」を営む傍ら、黒毛和牛の繁殖にも取り組む。栗と野菜の栽培は主に浩子さんが担当しており、林業以外の取り組みを新会社にまとめ、2人を迎え入れた。
カフェ開店を夢見る西田さんは、「声を掛けていただき、ありがたい」と感謝。「丹波栗のことも学びたいし、お客さんに喜んでもらえる野菜を作りたい」と意欲を見せる。
果樹栽培での独立を目指す岡田さんは、「いろんな挑戦をさせてもらえる環境。自分たちだけで栽培した野菜が、商品になるまでを学べる良い経験ができる」と目を輝かせている。