螺鈿作家 小島紗和子さん(丹波市)

2021.05.07
たんばのひと

小島紗和子さん

父と語った夢を追う

伝統工芸の螺鈿の技術を父から受け継ぎ、アクセサリーなどの小物を中心に表現している。人間国宝・黒田辰秋さんの弟子だった木漆工芸家の父、雄四郎さんが亡くなって約1年。今年の展示会では、父の遺作も引き続き披露しつつ、母の実家の屋号から付けた個人工房名「chogoro」としての作品によりいっそう磨きをかけていく。

螺鈿は、虹色光彩を持つ貝殻を使った装飾技術。古くからの正当な技法にこだわりがあり、厚みのあるシロチョウガイ、アワビガイ、ヤコウガイの3種類の貝を使っている。素地は木製品のほか、麻布を漆で固めたものも。漆を塗り重ねるのは数十回にのぼり、作品が完成するまでには100日ほどかかる。

伊丹市出身で、小学4年生の時に父が丹波市に工房を開いた。それ以来、父とはほとんど一緒に暮らしていなかったが、27歳の時、工房を手伝うことにしたときはとても喜んでくれたという。

昨年、父と散歩をしながら一緒に語った夢がある。「好きな物やお気に入りの物には、人を前向きにさせてくれる力がある。自分の作る物で誰かがそんな気持ちになってくれれば」

小学校時代に入った地元の合唱団で歌のとりこになり、高校、大学では声楽を専門に学んだ。卒業後も歌の仕事をしていたが、立ち止まって選んだのは、「生まれた時から身近に使っていた」木漆の世界だった。

「螺鈿は、派手だけど派手じゃない、宝石の輝きとも違う独特の魅力がある。飾っておく工芸ではなく、触れて使ってもらいたい」。兵庫県民芸協会会員。7月7―13日、阪急うめだ本店美術画廊で展示会を開催予定。40歳。

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