兵庫県丹波篠山市内で在日コリアンの足跡調査などを行っている市民グループの3人が、「消えたヤマと在日コリアン」を執筆し、岩波書店から岩波ブックレットとして発売された。戦前から戦後にかけて多くの朝鮮人が働いていた丹波篠山の鉱山産業と、戦後に在日コリアンによって行われていた子どもたちへの民族教育の歴史を中心に掘り起こしたものをまとめた。
執筆を担当したのは、「丹波篠山市在日コリアン足跡調査研究〈銘板設置の会〉」の細見和之代表(59)、川西なを恵さん(72)、松原薫さん(72)。
第1章で日本の近代と丹波篠山の歩みを、第2章で丹波篠山の鉱山と在日コリアンについて、第3章で戦後の丹波篠山における在日コリアンによる民族教育について記述。また、当時の在日コリアンの生活ぶりについて、聞き取りでの証言をコラムで紹介している。
3人は、2004年から始まった篠山市人権・同和教育研究協議会による「篠山市在日コリアン足跡調査研究班」のメンバー。06年の解散後も調査を継続し、地域住民の同意を得ながら市内のゆかりの地に銘板を設置する活動を続けている。
2018年には、1948年(昭和23)に丹波篠山市村雲地区の「鳥山鉱山」で起きた事故で犠牲になった朝鮮人3人のものとみられる慰霊碑が、豊林寺(同市福井)にあることを発見。当時の篠山新聞の記事から氏名の一致を特定した経緯などもブックレットに詳しく記している。
戦後、同市の篠山小学校内に民族学級が30年以上にわたり設置されるなど、市内には多くの在日コリアンの足跡がありながら、「篠山町百年史」や「篠山小学校創立一二〇周年記念誌」など、公的な記録には一切記されていないという。
細見代表は「丹波篠山は日本の近代の縮図のようだと感じる。全国にも同じように足跡が埋もれているのでは。地元の人たちには改めて思い起こしてもらいたいし、他の地域でも歴史を掘り起こそうという気持ちになってもらえれば」と話している。
税込み682円。