1964年の東京五輪の際、聖火ランナーに選ばれながらも台風の影響で兵庫県内の区間を走れなかった”幻のランナー”の一人で、同県丹波篠山市の植野良治さん(76)が26日、市内のグラウンドで今年のランナーを務めた同市在住の信夫大寿さん(43)とともにトーチを持って走り、「57年目のリレー」に臨んだ。
新旧走者の「コラボラン」を企画したのは、植野さんが会長を務める篠山ソフトボール協会の赤松健志さん。昨年、56年ぶりのリレーに応募したものの落選し、5月に地元の篠山城跡で開かれたリレーもコロナ禍の影響で見ることさえできなかった植野さんのためにと実施した。信夫さんの娘が市内のソフトボールチーム「ラクーンズ・ジュニア」に所属していたことも縁となった。
母親が大切に保管していた64年当時のランニングシャツを着て、信夫さんやチームの子どもたちとともにゆっくりと走った植野さん。トーチに聖火はなかったが、心には火がともったようで、仲間たちの粋な計らいに感極まり、「涙が出るほどうれしい。聖火リレーには参加できなかったけれど、64年も今回も忘れられない五輪になった。子どもたちとともに死ぬまでスポーツに携わり続けたい」と喜んでいた。