少年と兵士の物語描く 小説を初めて自費出版 「二つの墓標」3部作の長編

2021.07.25
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小説「二つの墓標」を自費出版した椋さん=兵庫県丹波篠山市北新町で

兵庫県丹波篠山市南新町の椋弘士さん(62)が、小説「二つの墓標」を、幻冬舎から自費出版した(1320円・税込)。戦時中、島根県の漁村で目の見えない祖母と暮らす、言葉の話せない少年が、漂流した韓国の兵士と出会ってから人生が大きく変わり始める―というストーリー。本にしたのは自身初で、「テンポよくストーリーが展開するので、読みやすく楽しんでもらえるのでは。自分では大満足」と話している。

少年は、帰国準備をする兵士と暮らしながら言葉や生きていくための知識を学び、兵士が帰国した後も立派に成長。神戸で働くようになったが、兵士と再会したい気持ちが抑えきれず、海を渡る―。

椋さんは5年ほど前、還暦を前に何か残そうと小説を執筆。友人に読ませたところ、「ばかにされた」と笑う。それに奮起して、全く別のストーリーを描いたのが今作品。

島根県の海に面した益田市の出身。幼い頃、浜辺にはハングルの入った板切れや瓶などが漂流していたし、海から敵が攻め込んできたという設定で、戦争ごっこに夢中になった。そんな素地もあり、書き始めると「すいすいと物語が浮かんだ」。30―40歳代に、ありとあらゆる小説をむさぼり読んだ経験も脳裏に宿っていた。

同市北新町で黒豆加工専門店を営んでおり、新型コロナウイルスの影響で客足が遠のいている期間に執筆に没頭、3カ月ほどで一気に書き上げた。「これ以上書けない」というところで、「あっさりと」筆をおいたが、「続きをにおわせるようだ」と編集者からアドバイスを受けた。これがきっかけとなり、続編をさらに2冊分書き上げ、全3部作となった。

3部では、悲運の末に流れ者となった少年の友人がデカンショ祭で屋台を出すという設定で、地元丹波篠山を紹介するシーンも数多く盛り込んだという。ただ2作目以降の出版予定は決まっておらず、「今作の売れ行き次第」と言い、「続編をどうしても読んでほしい人がいる。早く続編を出したい」と話している。

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