無施肥、無農薬で米、麦、豆を栽培する、兵庫県丹波市市島町の農業、太田光宣さんが、無農薬米の栽培で最も労力がかかる草取り作業を、後部に竹ぼうきを取り付けた田植え機を使い、省力化を図っている。ほうきで泥と共に雑草をかいて土中に鎮圧するもので、無農薬米栽培農家の間で話題になり、フォロワーが続々と現れている。
太田さんは、無農薬栽培を志し、神戸市からIターンして就農。米栽培を始めた10年前、人力で何本かの竹ぼうきを使って除草する無農薬栽培農家の姿を見た。「泥の中を歩くのはしんどい。もっと楽な方法はないか」と考えたのが、田植え機を「足代わり」に使うことだった。「苗が植わった田んぼで田植え機を走らせるなんて」と、周囲に笑われたが、意に介さず、楽に除草ができるよう少しずつ改良していった。
太田さんの除草法は、田植え直後から約1カ月後の分けつが始まるまでの間に頻繁に田んぼに入り、田植え機を走らせる。10アールを15分ほどで終えられ、1人で1・5ヘクタールの無農薬米を栽培する助けになっている。
7月の今の時期は、中干しの直前。特に雑草が多いほ場にだけ投入する。根がしっかり張っているので、この時期は、ほうきは深く突っ込まず、表面をなでる程度。大きく育った雑草は、運転席から身を乗り出し、長い柄の付いた草取り機で取っている。
これまでに10人ほどに教えたほか、有機農法を教える「丹波市立農の学校」の生徒にも伝授した。
農林水産省が2050年までに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に基づき、「化学農薬の使用量の50%低減、化学肥料の30%低減、耕地面積に占める取り組み面積の割合を25%にする」を掲げており、太田さんは、「竹ぼうき除草で、これを先取りしようと思う。奇異に映るかもしれないが、これがSDGsの実現に向けた農家の実践」と胸を張った。