兵庫県丹波篠山市藤岡口の藤本房子さん(75)と紗也禾さん(高1)は、10年前から2人で地域内のごみ拾いを続けている。まだ幼かった紗也禾さんが散歩していた時、房子さんに「おばあちゃん、ごみいっぱい落ちとるなあ。拾わなあかん」と話したのがきっかけになり、月1、2回、ごみ拾いに励むようになった。2人に対し、同市はこのほど、地域の環境美化などに貢献した人に贈られる「善行者表彰」を行った。
幼稚園に通っていた紗也禾さんはある日、子どもながらに集落内に多くごみが落ちていることに気付いた。後日、「一緒にごみ拾いに行こ」と祖母の房子さんを誘った。
以来、「身近な環境を少しでもきれいにしたい」と、地域で定期的にごみ拾いをするようになった。火ばさみとごみ袋を持ち、自宅前の道路約1キロのコースを中心に歩く。山裾や川沿い、田んぼ周辺を見回ることもある。
集落の近くには、キャンプ客が多く訪れる「藤岡ダム」(藤岡奥)がある。落ちているごみは、アルコール類やコーヒーの空き缶、たばこの吸い殻が多く、2袋がいっぱいになることもしばしば。房子さんは近所のリサイクル会社に勤務しており、作業員の補助役を務めている。拾ったごみは自宅に持ち帰った後、きっちりと分別する。
「今日もよーやっとってや」「偉いなあ」―。通りかかる地域住民たちは、黙々と地面に目を凝らす2人の姿を見るや、ねぎらう。紗也禾さんは「地域のみなさんに喜んでもらえるのが一番うれしい」とほほ笑む。
マッサージ師になるのが夢という紗也禾さん。「おばあちゃん(房子さん)の肩をもんであげる日が多いのですが、終わった後、『疲れが取れた』と喜んでくれる。そんなおばあちゃんを見て、もっと多くの人の疲れを癒やす仕事に就きたいと思った」という。
房子さんは「かわいい自慢の孫です」と顔をほころばせ、紗也禾さんは「部活や勉強で忙しくなると思うけれど、時間を見つけて、これからもごみ拾いを続けていきたい」と話していた。