兵庫県丹波篠山市の熊谷満さん(75)が玄関先で育てているススキの根元で、寄生植物の「ナンバンギセル」がひっそりと開花し、見ごろを迎えている。名の通りキセルのようにも、また馬のようにも見える不思議な形。うつむき加減に咲き、物思いにふけっているかのような姿から「オモイグサ(思い草)」とも呼ばれる。
葉緑素を持たないため光合成は行わず、ススキやミョウガなどの根に寄生し、養分を取りながら生育する。熊谷さん宅では15センチほどの花柄の先端に、長さ約3―4センチで、淡紫色の筒状の花を横向きにつけている。植えたものではなく、以前、近くに植えていたミョウガから移ったと考えられるという。
寄生するものの枯らしてしまうことはないようで、熊谷さんは、「『ウィズコロナ』という言葉もある昨今。寄生する花を見ていると、いろんなことを思ってしまうし、できれば共存したいもの。確かに思い草ですね」とほほ笑んでいる。