「過去だけでなく、残りの人生も輝かせる」―。モデルという体験を通して活力を感じてもらいたいと、兵庫県丹波篠山市内の60歳以上の人を無料で撮る活動「輝き写真」を展開してきたプロカメラマンの酒井大輔さん(36)が、目標とする100人を達成した。10月29―31日の3日間、同市立町にあるレンタルギャラリーで写真展を開く。「撮影後、『良い記念になった』『今までに味わったことがない経験ができた』と言っていただけたり、わざわざお礼の手紙を送って下さったりした方もいた」と言い、「写真展に来られた方にも、その人”らしさ”が詰まっている写真から元気や活力を感じてほしい」と来場を呼び掛けている。入場無料。
撮影コンセプトは「その人らしい場所で、姿で、ポーズで」―。絵手紙を描くのが趣味という人なら、作品を並べ、筆を立てるポーズをとってもらい、美容師なら、店内ではさみとくしを手にしてもらってシャッターを切った。撮影した写真はA4サイズのフレームに入れて後日、手渡しでプレゼントした。
酒井さんは「撮影時に『笑ってください』とは言わないようにしている。対話をしながら撮る。他愛もない話をしているときにこそ、その人らしい表情が出る」と語る。
「現像代やフレーム代などは自己負担。マイナスと言えばマイナス」と苦笑するが、「戦時中の経験など、自分の倍近く生きている人たちからの話は何ものにも代えがたい。皆さんとのご縁が財産になった」とほほ笑む。
90歳代の女性の一人が、撮影した約2週間後、天国へと旅立った。その女性の葬儀では、酒井さんが撮影した「輝き写真」が、遺影に使われたという。
以前、大阪府内で冠婚葬祭業に従事していたころ、年に数回、遺影用の写真を撮影するイベントのカメラマンを任されていた。当時から、無地の壁に、スーツや着物などの同じような服装で撮影した“何ともない写真“が遺影に使われることに違和感を抱いていたという。
酒井さんは「写真展に来場した方に、『輝き写真を終活写真として使いたい』と思ってもらうきっかけにもなれば」と話している。
酒井さんは「ウェディングフォトアワード2018」で金賞を、「近畿プロフォトコンテスト2018」ではグランプリを受賞した経験を持つ。
写真展の開催時間は3日間とも、午前10時―午後5時。