兵庫県丹波篠山市の認知度などを問う「GAP調査」を行っていた市はこのほど、結果を公表した。2015年以来の調査で、前回と比較すると、市の認知度、訪問経験ともに上昇。また19年の市名変更後のイメージの変化については、「丹波」の名を冠したことが要因か、「黒豆のイメージ」が40%近く上昇している。市は、「客観的な数字を活用し、的確に市のPRにつなげていきたい」としている。
調査は「丹波篠山ブランド」のターゲットやプロモーションの方向性を決定することを目的に、現状把握と分析のために実施。株式会社「リクルート」に委託した。
今年8月23、24日、インターネットを使い、大阪、京都、兵庫、東京、愛知、福岡の約1000人を対象とした。それぞれの都府県の割り当て人数になるまで調査したため、ふるい分けの段階では1万人から意見を聞いた。
同社の杉岡亮汰さんと田中優子さんが11日、市役所を訪れ、市職員や報道陣に調査結果を報告した。
前回調査と比べ、認知度は16・4%、訪問経験は7・6%いずれも上昇。東京、愛知、福岡からの認知度は10%程度上昇した。ただ、「知っているが行ったことがない」という答えも8・8%増えており、杉岡さんは「さらなる誘客促進が必要」と指摘。また、まちへの期待度は前回同様、高いものの、来訪してからの満足度は下がっており、「コンテンツは磨き続ける必要がある」とした。
市名変更後のイメージの変化では、38・3%上昇した黒豆をはじめ、▽大自然▽昔ながらの原風景▽伝統▽田舎暮らし―などが上昇し、「いわゆる丹波篠山らしいイメージが大幅に上昇している。黒豆については、4割近く上昇するのは大型テーマパークが開園したときと同程度。それくらい市名変更はインパクトがある出来事だった」と分析。一方、「丹波市と篠山市が合併した」というイメージが30・9%増、「丹波篠山市が京都にある」も13・7%増で、「違いの明確化が必要」とした。
興味度ランキングでは1位が丹波篠山牛。黒豆・枝豆、栗、ぼたん鍋と続き、上位4つが食資源となっている一方で、城下町や丹波焼への興味が低いことから、「魅力的な食で誘客し、丹波焼や風情のあるまちなみなどに誘導していくのが勝ちパターン」と提案した。
わざわざ行きたくなる要素では、「黒豆スイーツ」が若い女性を筆頭に全世代から圧倒的な支持を集めており、「女性をターゲットにしながら、スイーツをどんどん生み出してPRすることが重要。ブランドアップに向けての鍵は『食』。黒豆もさらに磨いていく必要がある」とした。
その上で、丹波焼の陶芸体験と黒豆スイーツのあるカフェ、丹波篠山牛のバーベキューと農業体験など、強みの食と環境資源を組み合わせたブランディングを提案。また、「ブランドを作るのは地域の人。そのため、地域巻き込み型を進めることが必要」とまとめた。
丹波新聞社の取材に杉岡さんと田中さんは、「市名変更後のイメージの変化について尋ねた人が、市名変更したこと自体を知っていたかは分からない。『あまり変わらない』と答えている人は、もともと知っていた可能性がある」と言い、「ただ、丹波が付くことで、黒大豆をはじめとする『食』のイメージが加わったことは間違いない。市名変更が大きく報道された効果でもある」とした。
また、「行政が地域を巻き込んでいくこつ」については、「まずは思いのある人を見つけ、成功パターンを見つけること。簡単に言えば、『もうかる事例』をつくる。ブランドを活用した取り組みで『うまみがある』と気付いてもらえるかどうか」と言い、「課題を共有し、共感してもらえるまで話をするためにデータを活用してほしい」とした。
市ブランド戦略課は、「認知度の上昇などは、うれしい結果。まずは日本遺産や農業遺産など、分かりやすいところから手を付け、市全体のブランディングとしての成功体験を重ねていきたい。結果を広く市民や関係団体にも公開し、市民からもムーブメントが起きれば」と期待。酒井隆明市長は、「流れとしては良いので、今後、どれだけ多くの人に丹波篠山を知ってもらい、まちづくりや観光に生かしていくかが課題」とした。