兵庫県丹波市の田園地帯に昼夜を問わず、毎日同じ場所に駐車しているパトカーが、道行くドライバーたちの間で話題になっている。白黒ツートンカラーに赤色灯と、おなじみの姿だが、車体の側面と後ろのバンパーに書かれた文字をよく見ると、「POLICE」ではなく「PEACE」。偽物だ―。
偽パトカーの持ち主は村岡成雄さん(65)。今年7月中旬、道路からよく見える自宅の庭の一角に置いた。「道行くドライバーが、私たちの田んぼにポイ捨てをよくするので困っていた」。偽パトカーは、ポイ捨てごみの防止策として置かれたものだった。
村岡さんによると、自宅裏を通る道路は、以前は砂利敷きの狭い農道だった。しかし、JR谷川駅から円応教本部辺りまでをつなぐ道の一部として拡張、舗装されて以降、一般車両がよく通るようになり、道沿いにある村岡さんらの田んぼに、飲み物の空き瓶や空き缶、弁当の空き箱、たばこの吸い殻などのポイ捨てが目立つようになった。
「何か良い策はないものか」と考えた村岡さん。子どもの頃からパトカーや消防車、戦車などが大好きで、「いつかパトカーを所有してみたい」という思いを抱き続けていたこともあり、「注意喚起にもなる」と、偽パトカーを製作することにした。
ベースとなる車体は、本物のパトカーに最も採用されているクラウン。手頃な中古車を探し、兵庫県警察本部の許可も取り付けた。県警からの禁止事項を守りながら、業者で白黒の塗装と赤色灯を取り付けてもらった。
本物そっくりの仕上がりにテンションが上がった村岡さんは、ポイ捨て防止啓発には無関係の内装にまで凝りだし、無線機や車載カメラを装備。さらには同じ集落の竹内薫さんにインターネットでパトカーの内装の詳細を調べてもらい、速度測定器、サイレン吹鳴装置などの専用装備を写した画像を印刷してインパネに貼り付けた。
偽パトカーといえど、「効果はてきめん。ポイ捨てはなくなりました」と村岡さん。「間近で見せてもらえますか」と見知らぬ人が訪ねて来て、写真を撮って帰る人もいたり、交通取り締まりと勘違いしたドライバーが慌てて速度を落としたりする様子もたびたび見られるという。
「本当に緊急事態に陥った人が勘違いして、深夜にでも駆け込んで来たらどうしよう」と心配する一方で、「今度は大好きな白バイも加えてみようかな」と笑っている。