メディア業界の専門紙「文化通信」を発行する文化通信社(東京)は今年度創設した、地域紙の優秀な記事を表彰する「ふるさと新聞アワード」の第1回受賞記事を1日、発表し、丹波新聞の「手作りプールで県優勝 近所の企業に製造依頼」(2020年12月20号掲載)が「こと部門」優秀賞を、「ノエルさん医師国試合格 南ア出身 丹波医療センター診療助手」(2021年3月21日掲載)が「ひと部門」優秀賞を受賞した。
全国地域紙20紙から約200本の記事がエントリー。1次選定の後、外部審査員の秋元里奈さん(ビビットガーデン社長)、加来耕三さん(歴史家、作家)、小山薫堂さん(放送作家、脚本家)、中川政七さん(中川政七商店会長)、山崎まゆみさん(温泉研究家)が選定した。
田畑知也記者
新型コロナウイルスの影響で所属チームの練習がなくなり、プールが使用できない中、足立君の「速く泳げるようになりたい」という願いに”出世払い”で応えた地域の企業。小学4年生が大人に直談判するのは大きな勇気が必要だったと思う。真剣に耳を傾けた大人にも脱帽だ。関わったそれぞれの熱い思いに心を打たれた。
このプールで練習した結果、兵庫県大会の男子10歳以下50㍍自由形で、見事に優勝。自己ベストも更新し、結果で応えた姿に感銘を受けた。
取材の裏側を明かすと、足立君が県大会で優勝し、丹波市長を表敬訪問するという市役所からの取材依頼があったことが最初。”よくある取材”だったはずが、話を聞くうちにプール製作の直談判の話が飛び出した。他紙が大きく扱わなかった、切り口を変えた話題を読者に届けることができたと思っている。
□「ノエルさん医師国試合格 南ア出身 丹波医療センター診療助手」
足立智和記者
合格発表の日、たまたま病院にいた。「受かった、受かった」と小躍りしながらノエルさんのもとに向かう院長について行き、先輩医師に万歳で祝福される場面を写真に収めた。ノエルさんは紅潮し、青い瞳が潤んでいるように見えた。医学用語は日本人でも舌をかみそうになるくらい長かったり、漢字で書けなかったりする独特なものだ。勉強を始めてわずか2年で合格するのは、驚異的。
この快挙を、何とか母国の関係者に伝え、母国から顕彰してもらえないかと、「貴国出身の青年が快挙を達成した」と、在日本南アフリカ大使館に連絡を入れた。後日、大使からノエルさんに祝福の電話があり、わが事のようにうれしかった。
大学でたまたま琉球古武術と出会っていなければ日本に来ることはなかった。来日しなければ、医師免許を取得するアイデアは浮かばなかったし、受験勉強をしながら働ける場を提供してくれた院長や同僚との出会いもなかった。努力はもちろん、「運」がノエルさんに引き寄せられているように感じられて仕方がない。
1年目の初期研修医として勤務している。「日本では麻酔科でなく、地域医療をやりたい。患者さん宅を訪問するような」。ノエルさんのようなイケメンが来てくれたら、血圧が上がりそうだ。
※このほかの受賞記事は次のとおり。
☆グランプリ
苫小牧民報
「アイヌの丸木舟 55年ぶり発見 弁天の海岸に2隻」
☆「もの」部門
【最優秀賞】
熊野新聞「記憶から記録へ 住民らが天満の地図作り」
【優秀賞】
胆江日日新聞「避難時便利なタンス 江刺の工房が発案」
夕刊三重「ホームベースを手作り 全国出場の野球部を応援」
南信州新聞「伝統の柚餅子継承へ」
☆「こと」部門
【最優秀賞】
熊野新聞
「特別カバー号『ガンバレ、ニッポン。負けるな、熊野』など」
【優秀賞】
あやべ市民新聞
「地域連携で被災地支援を 地域紙のあるまちネットワーク」
島根日日新聞「連載企画『出雲の祭り』」
☆「ひと」部門
【最優秀賞】
夕刊いわき民報「シリーズ震災10年─未来へのメッセージ」
【優秀賞】
熊野新聞
「川船製作技術を後世に 協力隊の北原さんが記録に残す」
須坂新聞「ふるさとの被災と向き合い続けた1年」