阪神・淡路大震災で神戸市灘区にあった自宅が全壊し、兵庫県丹波市市島町に移り住んだ「生涯学習応援隊so―so.39」代表の北村久美子さん(63)が、“自分ごと”として防災を考えてほしいと、ゲーム型の防災ワークショップを丹波市内の小学校で始めている。児童たちが避難所のリーダーになるという設定で、チームごとに話し合いながら、安心できる避難所をつくる―というもの。「話を聞くだけよりも、感じることがたくさんある。先生たちにも知ってもらい、学校現場で広がれば」と話している。
静岡県が開発した避難所運営ゲーム「HUG」をベースに考案した。昨年11月、市立竹田小学校4年生の授業で初めて実施し、児童の反応に手応えを感じたという。
ワークショップでは、同小体育館と、隣接のコンピューター室を避難所として設定。事前に、実際にある学校の備品で使えそうな物をリストアップしておき、まず、「地域の人が避難してくるためには何が必要か」を考えた。
続いて、被災者家族10組について、年齢、国籍、性別、ペットの有無、けがの様子―など、それぞれの事情が詳しく書かれたカードを配り、家族ごとに避難所内にどのように居場所を割り当てればいいかを話し合った。
「赤ちゃんが泣くかも」「足を捻挫している人はどこにいてもらうのがいいか」など、具体的で活発な意見が飛び交い、タブレット端末に配置を書き込んで、スムーズにクラスで意見を共有した。
授業後の感想では「もっと続けてやりたかった」と書いていた児童も。「グループで話し合ったことが面白かった」「自分たちにどんなことができるかよく分かった」など、積極的に取り組んだ様子が表れていた。
北村さんは、震災当時、家族4人で暮らしており、3歳だった娘が倒れてきた土壁の下敷きになり、土壁を掘って助け出した。震災から10年目、丹波市内の小学校で初めて震災体験を伝えた際には、さまざまな思いがこみ上げて「自分でもびっくりするぐらい号泣した」と話す。
また、2014年8月には、住んでいる前山地区が甚大な豪雨災害に見舞われた。自宅は幸い床下浸水で済んだが、流れてきた土砂で玄関がふさがれ、避難所生活に。「またも“生かされた”のだから、お役に立とう」と、被災者でありながら、前山地区のボランティアセンターで世話人として奔走した。
11年の東日本大震災後、ボランティアとして定期的に宮城県の被災地に通っており、丹波市豪雨災害の時は、つながりのあった人たちが東北からすぐに駆けつけてくれて、驚いたという。
防災をはじめ、ジェンダー、福祉、地域づくり、婚活支援など、さまざまな社会的活動に精力的に取り組む北村さん。「今の私をつくったのは、突き詰めれば、やはり『1・17』だったかなと思う」と振り返り、27年目の“あの日”に思いをはせた。