兵庫県内の丹波地域と阪神地域10市町の首長がこのほど、同県西宮市内で開いた会議で、小学生の自然学校などに使われる青少年教育施設「丹波少年自然の家」(丹波市青垣町西芦田)を運営する一部事務組合「丹波少年自然の家事務組合」を解散することで合意した。尼崎市の組合脱退表明から1年、9市町で継続を模索してきたが、運営費負担の増加を嫌う市があり、まとまらなかった。同施設の存廃の方向性や組合解散時期、解散手続きの進め方など、詳細は決まっていない。新年度は今年度同様に組合直営で運営する。
尼崎市が昨年2月、2023年度末での組合脱退を表明。児童数減で、同施設を使わずとも、尼崎市立美方高原自然の家(香美町)で小学校5年生の自然学校が行えると判断した。
尼崎市の脱退で、施設の管理運営費問題(19年度で年間1億500万円)が浮上。19年度の運営費は、西宮市が2478万円、尼崎市が2308万円、宝塚市が1206万円、伊丹市が1070万円、丹波市が735万円、丹波篠山市が315万円など。尼崎市が抜けた「穴」を埋める策を、「あり方運営会議」(丹波市、西宮市、三田市)で検討。丹波市では総合政策課が事務を担当し、従来の人口割、均等割に利用者割を加える新しい負担のあり方や、組合直営部門を縮小し一部を指定管理にするなどの経費削減案をまとめた。
自然学校で数校のみが利用している西宮市は負担が減り、利用校が多い伊丹市、三田市、宝塚市などで幾分か負担が増える試算だった。
調整は難航したが、1月末の首長オンライン会議で10首長がおおむね合意。しかし、2月に入り、利用割により300万円程度負担が増える伊丹市が負担増に応じられないと組合脱退意向を関係市町に伝えた。
方向性が見いだせない中、新年度予算案を審議する組合議会の今月7日、会議前に首長だけで協議したがまとまらず、組合議会を開き、新年度予算案を可決し、閉会した後で再度、首長で協議。最後まで折り合わず、組合存続は難しいとの結論に至った。
昨年2月の組合議会で、「残った市町で10年間、組合を存続させる思いがあるなら存続策を立案する」と林時彦・丹波市長が申し出た。異論は出ず、「あり方会議」が立ち上がった。
林市長は、「話を積み上げてきたが、もうちょっとのところで首長の思いが持ち合わなかった。残念」と言い、「子どもを犠牲にできない。新年度はこれまで通り。2023年度の運営がこれからの課題になる」とコメントした。
同施設は、自然の中での集団宿泊生活やさまざまな体験活動に加え、都市と農村の教育の交流を重視し、将来を担う若い世代の健全育成に寄与すことを目的に1978年に建設された。
同組合の正規職員は8人。会計年度職員が3人。敷地面積約15万平方メートル。鉄筋コンクリート造3階建ての本館(延べ床面積4670平方メートル、宿泊定員270人)、センターロッジ(同993平方メートル、同86人)、ログキャビン(同478平方メートル、同88人)、体育館、共同炊事場、3つのグラウンド、キャンプ場などを備える。
土地所有者は、西芦田他2ケ区林野管理組合。丹波市と丹波篠山市が毎年借地料を払っている。15年先の35年度まで契約している。建物の建設費は阪神8市町が負担している。起債の償還が27年度に完了する予定。
新型コロナの流行直前の19年度は、宿泊が4万9696人。日帰り利用が8335人。同年度は117校が自然学校で同施設を利用し、県内の類似施設で最多だった。