心になじむ特別な存在
サクラの世話をする「桜守(さくらもり)」として長年、丹波篠山市を中心に活躍している。桜守の養成講座、名所をバスで巡る「桜めぐり」、自治会などがサクラの手入れをする際の講師など、所属する「ささやま桜協会」が行う事業で中心的役割を果たしている。
祖母の影響で幼少期から植物に興味があった。小学生の頃、木が持つ本来の良さを引き出した盆栽作品を見て、その魅力に引き込まれ、自身も作品を育てるようになった。大学卒業後は盆栽専門誌の編集者をしたり、気候の違いを肌で感じながら庭造りの勉強がしたいと米・ロサンゼルスで働いたりした時期もあった。帰郷後は盆栽展や、同協会の前身、丹南町桜協会の立ち上げにも関わった。
最初からサクラは特別な存在だったという。「日本人の心になじむ花。花の時期だけ注目されるが、新芽や紅葉の時期もきれい。毎日変化があり、その様子が面白い」
経験から得た豊富な知識に加え、全国持ち回りで開かれているシンポジウムにも参加し、樹木医の視点や、サクラ管理に力を入れている自治体の取り組みなど、情報収集に余念がない。
川沿いに植わるサクラが、春にはピンク色の回廊をつくり出すが、「行政はてんぐ巣病に弱いソメイヨシノを植えて、それで終わり。だから今、管理が大変になっている。協会や造園業者との連携が必要」と指摘し、桜守の養成にも力が入る。
「桜めぐり」の時期になると、想定しているコースを小まめに確認、「一番良い状態を見てほしい」。協会発足時からの唯一の会員。「大変やけど、しゃあない」。サクラへの愛情と使命感が自身を突き動かしている。65歳。