王者へ右フック一閃 中学生ボクシングVの藤原君 7年でたどり着いた現在地

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全国大会で優勝した藤原壱哲君を囲む、入江会長(後列左)、入江コーチ(同右)、藤原伊奈瀬さん(前列左)=2022年4月2日午後7時19分、兵庫県丹波市青垣町沢野で

兵庫県丹波市の「丹波入江ボクシングジム」所属の藤原壱哲君(和田中3年)が、札幌市中央体育館でこのほど開かれた「全日本UJフレッシュ大会兼全日本UJ王座決定戦シード選手決定戦」(日本ボクシング連盟主催)の男子57キロ級で初優勝を飾った。競技を始めて7年目、全国の猛者に右フックで打ち勝った。藤原君は「勝ててうれしかったし、安心した」と静かに喜びを語った。

全国のブロック大会を勝ち抜いた新中学2、3年が集う大会。藤原君(164センチ、右きき)は、関西王者。両手に各3キロのダンベルを持ち、膝を使って真上に突き上げる筋トレを連続100回するなどして磨いた、力あるパンチが武器。接近戦で打ち合うインファイター。

同階級は6人が出場。新型コロナの影響で試合数を減らすため、2グループに分け、3人でトーナメントを戦った。初戦の東海チャンプ戦は、2ラウンドでプロボクシングのTKOに相当する「RSC」勝ちと、圧倒。決勝の相手は、過去の戦績から実力1位の優勝候補、九州チャンプ。やりづらい左利きの長身選手を、得意な打ち合いに持ち込んだ。バックステップから鋭く間合いを詰め、パンチを打ち込んだ。1分2ラウンドを3ラウンド戦い、判定に。5人のジャッジの採点は、1ラウンドが3―2、2ラウンドが4―1、3ラウンドが5―0。ラウンドを重ねるたびにポイント差を広げた。

「ツーワンからのフックが、相手の頭に『ゴン』と当たる音がした。相手のダウンでしょうと思ったけれど、そのまま流れた。冷静に、集中して戦えていて、終わった瞬間、勝った手応えがあった」と振り返る。

公式戦では緊張して実力が出せない頃もあったが、力を入れず打ち合うスパーリングのつもりで臨んだ。会場の雰囲気が、入江ジムが主催するジム交流会で小学生時分から何度もリングに立った青垣住民センターアリーナに似ていたことも、緊張をほぐしてくれた。

優勝で、中学生活最後となる8月の全国大会の出場権を取得。「8月も勝ちたい。もっとうまくなりたい」と思いを語った。

会長が泣いた日「あのやんちゃがここまで…」

元日本ジュニアウェルター級2位で、兵庫県神戸市から同県丹波市青垣町に移住し、2000年にジムを開いた入江会長(53)にとって最初の全国チャンプ輩出。「あの小さくてやんちゃだった壱哲が、よくここまで来たと、うれしくて泣いた」と感動を振り返り、「これから試合に出るジムの小中学生にも刺激になる」と喜んだ。

入江会長の長男で、昨年11月から藤原君を指導する、元同志社大学ボクシング部コーチの遼太さん(29)は、大学生のメニューを中学生向けに調整した練習を課した。「試合前の数日眠れなかった。ここまで練習させ、勝たせてやれなかったら、ついてきてもらったのにどうしようという気持ちだった」と安堵、喜びの涙がこぼれた。

ボクシングを始めたのは和田小2年生の時。「格闘技を通じ、気持ちが強い子に育ってほしい」と願った父の藤原優二郎さん(38)にジムに連れて来られた。「サンドバックを打つのが楽しくて」(藤原君)始めた。

近畿大会で敗れた2年前、「全国制覇」と目標を定め、ジムの壁に貼った。練習は真面目に取り組むものの、長く結果がついて来ず、やめようかな、の思いは何度も頭をよぎったという。「全国優勝していないし、本当にやめていいのか」と、自身を奮い立たせ続けた。

優二郎さんは、「『これがしたい』と自分で言う性格ではなく、6年以上も続けてくれるとは思わなかった。決勝は、入江ジムで知り合った各地のジム関係者、選手の応援も力になったと思う」と感激していた。

妹で、女子小学生49キロ級関西チャンピオンの伊奈瀬さん(和田中1年)は、「しっかり手が出ていたし、ステップが乱れていなかった。3ラウンドの攻めを見て、勝ったと思った。私は距離を取るボクシングだけど、自分の距離で積極的に戦い、お兄ちゃんのように強くなりたい」と、自身も全国制覇をめざす。

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