道行く人を和ませるおじいちゃん、おばあちゃん、そして孫―。兵庫県丹波市春日町鹿場の柳田守さん(82)、やよいさん(78)宅に、ほのぼのとした3体のかかしがたたずみ、地域住民を癒やしている。畑に来るカラスや野良猫を追い払うつもりで守さんが製作したが、どちらかというと道行く人の心を和ませる効果が絶大。当初、野良作業中に一服する“祖父母”の2体だけだったが、ひと月ほど前に男の子の“孫”が登場し、近く女の子の孫もお目見えするという。夫妻は「地域の人に喜んでもらえるのはうれしい」と話している。
おじいちゃんのかかしは帽子に軍手の野良作業スタイル、おばあちゃんは頭に手拭いを巻いてエプロンをした農婦姿。いずれもいすに座ってコップを持ち、畑仕事の合間に一服する様子を表現した。2人にすがるように立つ男の子は身長120センチほどで、「遊ぼうよ」と言わんばかりに寄り添っている。
昨夏、畑に植えたスイカがカラスの被害に遭い、ほとほと困っていたという。やよいさんに「畑に立って見張っといてよ」と言われた守さんは、「そうもできないので、かかしを作って任せることにした」。
2年前に、60年間、腕を振るった建具屋を畳んだ守さん。おじいちゃんかかしの顔は木材をノミやナイフで丸く加工し、おばあちゃんかかしの顔はひょうたんを使った。いずれも目や口はマジックで書き、体は木を継いで骨組みとし、カンナくずを詰めて膨らませた。「作りかけたら面白くなってね」と守さん。
夫妻が着なくなった服や、新品だが「派手やから、よう着やへん」(やよいさん)エプロンや靴を履かせた。孫のかかしが着ている青いセーターは、40年以上前、やよいさんが息子のために手編みしたもの。やよいさんは「何に使えるか分からんねえ」と笑う。
鹿場自治会の入り口近くで、小中学生の通学路にもなっている通り。子どもたちから「本物みたい」と驚かれたり、住民からは「心がほぐれる」という温かい言葉をもらったりと、地域を和ませるのに一役買っている。「怖いかかしの方が効果あるんちゃうかな」「子どものかかしも作ってみたら」など、次々に感想が寄せられたという。
当初、畑のそばに置いていたが、雨に濡れるのがかわいそうで、今はカーポートの屋根下にたたずんでいる。2人は「かかしとしては、作物を育てるこれからが“本番”。でも、いろいろと話題にしてもらえて良かった」と目を細めている。