鉄路維持の先行き不透明 JR加古川線の低利用区間を公表 「議論や検討材料に」

2022.04.19
地域

輸送密度が低いと公表されたJR加古川線。谷川発は、平日9本、土日8本。全列車ワンマン運転=兵庫県丹波市山南町谷川で

JR西日本が11日に初めて公表した、ローカル線のうち特に利用が少なく採算性の悪い30区間に、加古川線(兵庫県)の谷川―西脇市区間(17・3キロ)が含まれた。同社は、実態や課題を共有し、より具体的な議論をするための情報開示と位置付けている。鉄道路線が維持されるか、先行きが不透明になっている。

同社は、輸送密度(平均通過人員)が1日2000人未満の線区について、一定の前提に基づき算出した収支率などを開示した。輸送密度が低いと、大量輸送の鉄道の特性を十分発揮できず、二酸化炭素排出の面でも、鉄道の優位性を発揮できないとしている。今後は、「鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたい」とする。

谷川―西脇市区間の1日当たり平均通過人員は、1987年の1131人から19年は321人に減少。新型コロナの影響を受けた20年は215人だった。2017―19年の平均収入2000万円に対し、平均費用が2億9000万円で、2億7000万円の赤字。収入を費用で割った収支率は6・4%。営業係数は1567。100円稼ぐのに1567円かかる。

加古川線区間が表記された切符運賃表

開示された区間に9駅(谷川、久下村、船町口、本黒田、黒田庄、日本へそ公園、比延、新西脇、西脇市)あり、沿線自治体は、谷川、久下村駅が丹波市のほかは、西脇市。

両市の担当者は、JR加古川線が阪神淡路大震災の際に、不通になったJR東海道本線、山陽本線の代替路線として人員や物資が輸送される迂回ルートになったことを踏まえ、発災が懸念されている南海トラフ地震への備えに同路線の重要性を説く。丹波市によると、昨年の久下村駅の利用は1日平均10人、谷川駅は福知山線と合わせ同648人だったという。

丹波市の担当者は「福知山線、加古川線と2つのルートで阪神間と結ぶことの重要性を整理し、西脇市、県に相談し、JRと話をしていきたい」という。

西脇市の担当者は「廃線にし、バス代替輸送などの可能性を示されたと受け止めている。主要な交通手段として使っている市民がいる。JR側の言い分だけが一人歩きしないよう、慎重に進めるように担当者レベルではお願いした。加古川線は西脇市―谷川駅だけでなく、加古川市まで含む沿線自治体に関わる問題だ。鉄道はネットワーク。鉄路で福知山線との接続が切れると、思わぬ影響が出かねない」と警戒する。

JR加古川線は、全線の電化に沿線市町が費用の一部を負担した。「JR加古川線・神戸電鉄粟生線・北条鉄道利用促進協議会」(事務局=県北播磨県民局)が沿線の情報誌を発行しているものの、丹波、西脇両市とも、利用者増につながる特典を付けるなどの施策は特段講じていない。

2年前から柏原―谷川―西脇市間で利用している会社員男性(60)=西脇市=は、「ゆったりと通勤ができるので電車が良かったが、利用できなくなったら車通勤するので、特に不便さは感じない」と話す。

バイク通勤中にイノシシと衝突事故を2度起こし、15年ほど前から電車通勤に切り替えた会社員男性(57)=兵庫県三田市=は、新三田―谷川―本黒田の区間を利用。「通勤時間は、朝は1時間10分程度だが、帰りは電車の接続が悪く、2時間半ほどかけて帰宅している。谷川―西脇市間が廃止となっても代替交通としてバスを運行してくれるのなら、接続の悪さも解消されると思うのでありがたいのだが」と話している。

県内では、山陰線で城崎温泉―浜坂など2区間、姫新線で播磨新宮―上月など2区間、播但線で和田山―寺前の1区間が公表対象になった。

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