日本六古窯の一つ「丹波焼」の里として知られる兵庫県丹波篠山市今田地区で、2軒の窯元がギャラリーを新設した。「丹文窯」の大西雅文さん(42)=同市今田町下立杭=は自宅の1階を改装し、ギャラリー「tanbungama109」を新設。登り窯で焼成した食器類を中心に、厳選した約200点を展示・販売している。「昇陽窯」(大上裕さん・大上裕樹さん)は、同市今田町下立杭に新しくギャラリーショップ兼工房「昇陽窯セラミックラボ」を開設。他分野とのコラボワークショップが開けるギャラリーを設けるなど、ハード、ソフト両面からオープンな空間を目指している。
◆「丹文窯」 登り窯作品のみ展示 料理との組み合わせ「自由に」
丹文窯のショップ(同県三田市西相野)では釉薬をかけた現代的なデザインの作品が多く並ぶが、新設したギャラリーでは、登り窯で焼成した作品のみを展示。大西さんは「昔から受け継がれてきた技法を魅せたい」と話す。
電気、ガス窯が主流になりつつある中、無骨で、土本来の色合いを生かした登り窯作品の魅力を感じられ、料理との組み合わせのアイデアを膨らませてもらえる空間をと、ギャラリーの新設を思い立った。
ギャラリーは和室(約13畳)を改装。食器をはじめ、花入れ、酒器、茶器なども並ぶ。安土桃山時代の作品で、当時は穀物の保存用に使われていたという「古丹波」も展示している。
「人々の生活のニーズに合わせて作り続けられてきたのが丹波焼。小鉢と思って作った作品を『ええ杯やなあ』とおっしゃる方もいた。器をどう使うかは、使い手の自由」とほほ笑む。
ギャラリーの新設後、丹波篠山市内や大阪などから料理人を招き、料理をギャラリー内の器にのせて提供するパーティーを知人のみで開いた。新型コロナウイルス禍が落ち着けば、一般客も参加できるような料理イベントも開催できればと考えている。
丹文窯が登り窯で作品作りを行うのは年に4、5回ほど。山で掘り、水を含ませた土で成形し、乾燥させたものを焼く。三日三晩、窯と向き合う。
どんな作品が出来上がるかは、窯から出す瞬間まで分からない。「皆さんから『窯出しが楽しみですね』と言ってもらえるが、実際は開けたくないぐらい怖い」と苦笑する。「15年ぐらい登り窯で作っているけれど、自分で良いと思った作品は1つもできていない。追究はまだまだ続く」と理想は高い。
ギャラリーの開放は原則、土・日・月曜日と祝日の午前11時―午後4時。
◆「昇陽窯」 風通しの良い場所に 他分野との催し場も
「風通しの良い場所」がコンセプト。大きな窓から虚空蔵山が見える開放的な雰囲気にしたほか、工房は、見学通路から普段の創作風景が見られる位置に配している。
2階建ての使われなくなった工房を改装。1階はギャラリーショップにした。梁をむき出しにして吹き抜けにし、広々とした空間に。壁はキラキラした砂壁をあえて残し、年配の客が懐かしみ、若者が新しいと思える工夫をした。吹き抜けの2階の壁ははがしたままにし、竹組みの構造などが見えるようにした。裕樹さん(36)は「お客に遊び心を感じてもらいたかった」と話す。
ギャラリーショップには、もとの出窓をはめ殺し窓にし、ショーウインドーに。中央には立杭産のカヤノキを製材した長さ約2・5メートルの板を置き、商品を陳列している。また、「さまざまなシーンで食器を選べるよう」、樹種や色が異なるボードの上に食器を置き、客が選べるように工夫した。
2階のギャラリー兼ワークショップスペースも天井を取り除き、広々とした空間に。初代・昇さん、裕さん、裕樹さんの作品や、所蔵する古丹波を展示し、作陶風景などのイメージ画像を流すモニターを設置した。音楽や食、ヨガ、花などとの他分野とのコラボワークショップを開催し、陶器の可能性を広げる場とする考え。
1階の吹き抜け部分とつながる2階部分は大きな窓が設置され、虚空蔵山を正面に眺めることができる。また、工房がある1階から2階に上がるときに作陶風景や、乾燥用の差し棚などが見られるよう工夫した。このほか、セラミックラボと昇陽窯本店の間に位置する登り窯をそのまま残し、見学できるようにした。
裕樹さんは「できるだけあったものを残し、心地よい、開放的な空間になるよう工夫した」と話している。
営業は午前9時―午後5時。火曜定休。