台や脚立に乗ることなく、安全かつ効率的に実山椒を収穫できるように、「超」低樹高栽培に取り組む兵庫県丹波市の奥丹波芦田農園(芦田美智則代表)でこのほど、収穫作業があった。一般的な低樹高栽培の半分ぐらいにカットバック(大規模剪定)した株から結果枝が伸び、結実する成果があった。芦田さんは、「手が届く範囲で収穫ができた。作業性が高まる」と喜んでいる。
技術顧問の丹波アグリライフ研究所代表で、元県丹波農業改良普及センター所長の秋山隆さんが、実証研究。俗に「切ったら枯れる」と言われる山椒の木だが、3月末―4月初旬の間に、一般的な低樹高栽培で2―2・5メートルとされる樹高を、1メートルほどまで強く剪定しても、切断個所の脇から新芽が芽吹くことが分かった。切った年の翌年に芽吹いた枝が結果枝に成長。地上から1・3メートルほどの所に、たわわに実を付けた。
秋山さんは、切る時期は違うものの、丹波市の特産品・丹波栗で培った、カットバックの考え方を応用したという。「栗と違うのは、山椒は休眠期に切ってはいけないという点。樹液が動き始めてから切る。実を収穫する5月下旬に枝を切ったのでは遅く、芽吹かないことも分かった」と言う。
新しく伸びた結果枝を調べたところ、先端から3分の1ほどの所は花芽がなく、先端は切っても問題がないことも分かった。
大規模剪定することで、枝に付く花芽の数が減るのに伴い、実の数も減るので、剪定前より収穫量は減少を見込む。一般的な剪定をした株と、強剪定株との収量の差を調べている。来年の課題は、結果枝の本数の最適化。「芦田さんは大粒の実にこだわりがあり、どの程度間引けば、粒がより大きくなるのかを見る」と言う。
実山椒を120本植えている芦田さん。手でもぐしかなく、収穫の旬が数日しかないため、知り合いのつてをたどって、丹波市内中からもぎ手を集めているが、毎年、人集めに苦労している。「高齢の方にもいでもらうので、けがに気を遣う。低樹高だったら、手伝ってやろうという人も出てくるのでは。収量がひどく落ちるのは困るが、少し減るぐらいなら、作業性が高まる分との相殺で、採算は合うだろう」と期待している。
2人は3年前から、低樹高栽培の研究に取り組んでいる。実山椒は高収益作物ながら、収穫が手間で、大規模展開しづらい課題がある。