兵庫県丹波篠山市東吹の寺戸英二さん(32)が立ち上げ、島根県西部・石見(いわみ)地方を代表する伝統芸能「石見神楽」を楽しむ団体「篠山神楽社中」が、波々伯部神社で公演した。昨年の結成以来、地域での公演は初めて。神楽らしく神社の拝殿で勇壮な舞やにぎやかなはやしを披露し、地域住民から大きな拍手を浴びた。来場者の中には島根県出身の人もおり、「懐かしいはやしが聞こえてきて足を運んだが、とても素晴らしかった。丹波篠山の人たちにもっと石見神楽を知ってもらいたい」と社中に期待を寄せていた。
「恵比寿」と「大蛇(おろち)」の2演目を披露した。
「恵比寿」は、はやしに乗せて恵比須様が舞い踊り、最後は鯛を釣り上げて福をもたらすというめでたい演目。釣りのまき餌を表現した菓子を境内に投げ入れる場面もあり、子どもたちがうれしそうに拾い集めていた。
日本神話のスサノオノミコトとヤマタノオロチの激戦を描いた「大蛇」では、2匹の大蛇が拝殿を所狭しと這いずり回り、花火も登場するなど迫力満点。最後はスサノオノミコトが大蛇を討ち取り、子どもたちは、「すごい」と目を輝かせていた。スサノオノミコトは同神社の祭神でもあり、縁深い演目となった。
寺戸さんと同神社の近松戝宮司がフェイスブック(交流サイト)で友だちになったことがきっかけで公演が実現。大々的にPRしていなかったものの、はやしの音を聞きつけて来場する住民の姿もあった。
足を運んだ近くの荒木博さん(72)は、本場・島根県石見地方の浜田市の出身。「田んぼにいたら懐かしいはやしが聞こえてきた。生で見るのは50年ぶりくらい」と喜び、「結婚してこちらに来ていなければ、自分も石見神楽をしていたはず。やっぱり良いですね」と興奮気味に語っていた。
初めての地域での公演に寺戸さんは、「めっちゃ気持ち良かった」と爽やかに言い、「これからどんどん地域の皆さんに呼んでもらいたい」と呼び掛けていた。