「集落の教科書」 移住者向けガイドブック NPO法人が作成

2022.07.15
地域

 

これまでに作成した「集落の教科書」を前に、著書の「『集落の教科書』のつくり方」を手にする田畑さん=京都府南丹市で

兵庫県丹波市山南町岡本出身の田畑昇悟さん(37)=京都府南丹市=が、「『集落の教科書』のつくり方」(農山漁村文化協会発行、1540円)と題した本を出した。「集落の教科書」は、移住者を呼び込みたいと考えている地域が、移住希望者に向けて自治会費や役員の決め方、葬儀の習慣、共同作業など地域の情報を包み隠さずに伝えるガイドブック。田畑さんはこれまでに南丹市や亀岡市、石川県七尾市、宮城県丸森町、北海道石狩市の各地域で計12冊の教科書作りに関わった。教科書が生まれた経緯や基本的な考え方、もたらす効果、教科書づくりの方法などを一冊の本にまとめた。

田畑さんは、南丹市にあるNPO法人テダスの事務局長。2014年に同市の世木地域から移住希望者に向けたガイドブック作成の依頼を受けた。地元振興会との初めての会議で、「良いことだけでなく、都会の人には不合理と思われかねないことも載せましょう」と提案。出席者から「地域のイメージが悪くなる」との反対があったが、「このままでは現状は変わらない。挑戦してみよう」との声が上がり、全国で初の取り組みという教科書を編集。A5判、50ページにまとめた。

世木地域を構成する4集落の一つ、中世木区は教科書作成時、高齢化率が50%以上の限界集落だったが、今は55歳以上が50%を超える準限界集落になった。世木地域全体で移住した人がその後、転出した事例は1件もないという。

教科書作成後、世木地域では移住促進の機運が高まり、地域の若者が参加した婚活イベントや、移住が決まりそうな空き家を集落の人たちが掃除をする“お掃除イベント”を行うなど、教科書作成による副次的効果が見られたという。

教科書には300項目ほどを掲載。移住後に「こんなはずではなかった」と思われないよう、ありのままを伝える。「そうした姿勢が、移住希望者に誠実な地域と映る。でも、今では正直に発信することが当たり前になっています」と田畑さん。「生まれ育った丹波地域でも、『集落の教科書』づくりに関わりたい」と話している。

 

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