大学から始め日本代表に 「カヌースプリント」 関学4回生の細見さん

2022.07.23
地域

大学から始めたカヌースプリントで日本代表をつかんだ細見茉弥さん=2022年6月22日午後1時44分、兵庫県芦屋市の県立海洋体育館で

兵庫県丹波市春日町出身の関西学院大学4回生で体育会カヌー部の細見茉弥さん(21)が、カヌースプリントの日本代表としてU―23世界選手権(8月31日―、ハンガリー)、世界大学選手権(9月16日―、ポーランド)、U―21アジアパシフィック選手権(9月29日―、石川県)を転戦する。大学から始めた競技で、女子大生では国内屈指の強豪選手に。「日本はカヌースプリントが弱い。どの試合も決勝進出を狙い、世界で戦う足掛かりにしたい」と、大会を楽しみにしている。

それぞれの大会の選考を突破した。昨年度は新型コロナの影響で大会が少なく、自身初めての海外派遣。U―23のみ、4人乗り(社会人2人、学生2人)のチームで、他の大会はソロ(1人)で出場する。

関西学院のユニフォームで大会に出場する細見さん(提供)

入学式で勧誘され、入部する気はないまま練習場の兵庫県立海洋体育館(同県芦屋市)に見学に行った。真っすぐで熱い先輩たちと、部が掲げる「チームで日本一」の目標に心が動いた。半数以上が大学から競技を始めるので「置いていかれる心配」がなく、「みんなで頑張れる」環境が、決め手になった。

総合政策学部のある同県三田市のキャンパスから週5日、授業終わりに練習に通った。「艇に乗って1秒で転覆」から、日に日に乗れる時間が長くなり、気が付くと500メートルこげるようになっていた。タイムも面白いように縮まり、日々成長を実感できる喜びがあった。入部半年後の新人大会で、200メートルと500メートルの両方で、いきなり優勝。「頑張れば、日本一になれる」実感が湧いた。

全日本学生選手権(インカレ)は、2回生時に500メートルで決勝7位、3回生時は同2位。1位と0・05秒差だった。武庫川女子大学の選手が上位を占めるなか、細見さんは1人、気を吐いている。

キャリアが浅く、ジュニア時代から場数を踏んでいる選手のような巧みさはない。波が立ったり、横風が強いコンディションは不得手だが、強みは春日中学校、柏原高校の陸上部で800メートル走に打ち込んだ持久力。残り150メートルでもう1段ギアが上がる。「地上の800メートルと水上の500メートルがほぼ同じ感じ。しんどさ、レース展開も800メートル走に似ている」

水上練習の後、週2日は西宮市の本学のトレーニングセンターで、筋力トレーニング。陸上選手時代は鍛えていなかった上半身を鍛え、ベンチプレスは入学時のマックス40キロから、70キロまで上げられるようになった。座って足で板を蹴り、全身で推進力を生む。下半身強化のため、週2日は走り込む。

「サークルに入って遊ぼうと思っていた」「高校の陸上も努力したが県で決勝にも残れなかった」と、競技に打ち込んでいること、好成績を残し続けていることに「いまだに自分でも信じられない思い。家族はあきれ、丹波の友だちはびっくりしている」といたずらっぽく笑う。

目標は、インカレ優勝から、世界で戦える選手に上方修正した。4回生だが、就職活動はしていない。卒業後も競技を続け、パリ、ロサンゼルス五輪を目指したいと考えている。

「まだ、社会人の国内トップ選手とは力の差がある。爆発力が必要な200メートルより、自分には500メートルが向いている。海外遠征で、世界の実力を肌で感じ、成長の糧にしたい」と瞳を輝かせた。

【カヌースプリント】 静水面で1―4人艇に乗り、一定の距離(200メートル、500メートルなど)と、レーンを決め、複数の艇が一斉にスタートし、着順を競う。

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