黒枝豆の産地として名高い兵庫県丹波篠山市の新たな夏の特産品にと、同市内の大規模農家やJA丹波ささやまなどが、茶豆風の芳醇な香りと、濃厚な甘みが特長の枝豆「デカンショ豆」の生産・販売に注力している。厳選した枝豆品種を、丹波篠山の肥沃な土壌で栽培。今後、さらに生産規模や販路を拡大していき、ブランド力や農家所得の向上につなげたい考えだ。
同市は、黒大豆の栽培システムが日本農業遺産に認定された産地。市内の若手農家5軒と同JA、市、「デカンショ」の商標を持つ市商工会、兵庫県、JA全農兵庫などが手を組み、黒大豆の栽培技術や、秋しか使用しない枝豆専用の機械を生かして、夏向けの枝豆を売り出そうと発案。2020年から販売している。
県内最大級の民謡の祭典「デカンショ祭」にちなみ、「デカンショ豆」と名付けた。「歴史あるデカンショ節のように、味わい深い枝豆を」との思いを込めた。
デカンショ豆となる枝豆は「神風香」「夏風香」「濃姫」の3品種。人工味覚センサーによる味分析などを経て、特に甘みが強い品種を絞り込んだ。昼夜の寒暖差が激しい、丹波篠山独特の気候も相まって、より甘さが増す。
今年は市内約6ヘクタールのほ場で栽培。約20トンの収量を見込む。4月上旬―6月中旬に各品種の適期に応じて種をまき、7月上旬から収穫する。
おいしさの秘訣は、収穫後の徹底した温度管理にある。さやもぎ、洗浄を素早く行い、収穫後3時間以内に10度以下の冷蔵庫に入れ、鮮度を保つ。
同JAによると、現在栽培している市内事業所は、丹波たぶち農場(口阪本)、アグリヘルシーファーム(味間奥)、丹波篠山かまい農場(今田町木津)、みたけの里舎(和田)、アグリストリート(黒田)の5軒。鮮度やおいしさを実現するため、収穫後の冷蔵環境が整っているのが条件で、来年以降、さらに栽培農家を増やしていく。
昨年まで、販売場所は県内のみだったが、今年は大阪の高級スーパーなどにも出荷。JAの通販サイトでも販売している。市内の給食や、8月に3年ぶりに通常開催されるデカンショ祭で提供するなど、地元での浸透も図る。
同JA担当職員は「夏場に飲むビールにぴったり。小さい子どものおやつにも」とPRしている。
1・2㌶でデカンショ豆を栽培している丹波たぶち農場の田渕泰久さん(44)は「丹波篠山を『いつ来てもおいしい物がある』と言われるまちにしたい。デカンショ豆を買うために夏にドライブで訪れる人が増えてくれれば最高」とほほ笑み、「忙しい秋にしか雇えなかったパートさんが、年間を通じて来られるようになる。雇用の安定にもつながる」と話している。
販売期間は8月下旬まで。200グラム298円(税別)。