立秋を過ぎ、お盆を迎えたものの、兵庫県丹波篠山市内ではまだセミたちの羽化が続いている。夜な夜な茶色い幼虫が成虫へと”変身”。生命の神秘を感じさせる。
午後7時、羽化が観察できるスポットへ。ライトで地面を照らしてみると土の中からはい出てて来た幼虫の姿があった。地上から60センチほどの高さまでよじ登り、しばらくうろついた後に動きが止まる。
背中の中心に線が入り、割れた。10分ほどすると顔が外に出る。その後もゆっくり反り返りながら殻を脱いでいく。新しい体に血液を送っているのか、時折ぶるっと体を震わせる姿は命の鼓動を感じさせる。
フィギュアスケートの「レイバックイナバウアー」ならぬ”セミバウアー”と言えるほど反って体のほとんどを出すと、今度は腹筋で戻りながら全身を出した。若い体がエメラルド色に輝く。
「脚?」と思うほど小さかった羽がゆっくりと伸び、2時間ほどかけて開き切る。美しい筋が入った白い羽は、この瞬間しか見られない姿だ。
土の中で7年から10年ともいわれる時間を過ごし、地上に出てきたとしても羽化の成功率は40%程度ともされる。実際、この日も背を割る途中で木から落ちた幼虫がおり、すぐにアリが群がった。
生き物の力強さとはかなさを同時に感じる夜だった。
【丹波新聞虫部】