「隠れ家」改装のそば店「ねじき蕎麦」店長 藤本定一さん(丹波篠山市)

2022.09.04
たんばのひと

藤本定一さん

笑い合える仲間が全て
山道にひっそりとたたずむそば店「ねじき蕎麦 in 時夢館(タイムハウス)」(丹波篠山市今田町黒石)の店長。元青年団仲間5人の「隠れ家」だったコンテナハウスを改装した。

生まれも育ちも黒石集落。旧丹南町の職員として約30年、旧4町合併後には篠山市の職員として約10年勤め上げた。

「お互い『こう言ったらこう返すやろな』というのが分かる」というほど気心の知れた仲間たち。家族に遠慮なく集えて、宴会を開ける空間にしようと、「将来のために」と5人が月1万円ずつ貯金してきた資金を元手に、1998年にコンテナハウス「時夢館」を建てた。

時夢館に「さらに人を呼び込みたい」と思っていた藤本さん。退職後、そば打ちを学べる猪名川町の道場に通いつめ、そば作りにはまった。「店をやりたい」と伝え、仲間も賛同。時夢館を改装し、12年秋に開店した。

手打ちの十割そばがうり。種まきから栽培、製粉までを自分たちの手で行う。こだわりのそばはもちろん、藤本さんら5人との会話を目当てに、遠方から足を運ぶ客も多いという。

「顔を見て話し、時にはけんかしたり、泣いたり。そうすることで人の気持ちが初めて理解できると思う。今だからこそ、そんなやり取りが必要では」と力を込める。

開店10年目の節目を迎えた。家族や知人らの手も借りて営業している。5人の中には体調を崩した人もおり、営業体制は変わった。ただ、「『わしら一番あほやけど、一番笑うとるな』とよく言い合うんです。縁は絶対に切れない。一人では何もできなかった。仲間は僕の全てです」と笑顔を見せた。愛称は「さーやん」。70歳。

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