ダムの橋になぜ音板? 旧町長が設置発案 「景色見ながら楽しんで」

2022.09.27
地域

メロディー・ブリッジのゆえんとなっている音板。マレットでたたくと、「デカンショ節」と「茶つみ」のメロディーの一節になる=兵庫県丹波篠山市西古佐で

丹波新聞社では住民のさまざまな疑問を調べて解決する「調べてくり探(たん)」を展開しています。今回は、兵庫県丹波篠山市在住の男性からの依頼。川代ダム(同市大山下)に、木槌(マレット)で音を鳴らしていくと曲になる板が設置されている橋がある。なぜ音板が設置されたのか気になる。経緯を調べてほしいー。

音板が設置されている橋の正式名称は「一ノ瀬橋」で、通称「メロディー・ブリッジ」。橋の片側に、鉄琴音板(高さ25センチ×幅4センチほど)が計約80個、50センチ程度の間隔で設置されている。備え付けのマレットで、端から順番に1回ずつたたいていくと、民謡「デカンショ節」と童謡「茶つみ」のメロディーが響く。

使い方などが載った解説板も設置されている。老朽化で文字が所々ぼやけているが、文末にははっきりと「丹南町」と記されている。

川代ダムで環境保全活動を行っている協会の会員らに、旧丹南町職員で、メロディー・ブリッジの設置に関わった雪岡健一さん(69)=同市大山下=を紹介してもらった。

雪岡さんによると、当時、丹南町長だった河南貞夫さんが「通る人に、ダムの下流を見ながら音も楽しんでほしい」と発案したという。「河合楽器製作所の製品としてテレビで流れていた。それを見て『面白い』と思いついたのでは。現物の下見に、担当課長と九州まで日帰りで足を運んだこともあった」と話す。

一ノ瀬橋の外観。タワーからケーブルを斜めに張って橋桁をつる「斜張橋」と呼ばれる構造で、当時の車道橋としては珍しかった

近畿農政局東播用水農業水利事業所が記録した「東播用水事業誌」によると、一ノ瀬橋は1984年3月から翌年3月にかけて県が架設。長さ約90メートル。西古佐と大山下を隔て、川代ダムの直上流に架かっている。タワーからケーブルを斜めに張って橋桁をつる「斜張橋(しゃちょうきょう)」と呼ばれる構造で、当時は最新鋭の技術だった。

当時の設計書類などには、開園が予定されていた同県立丹波並木道中央公園(2007年開園)など周辺の土地利用の利便性や、旧丹南町のランドマークになり得るとして、最新鋭の構造を取り入れたという旨の記載がある。

音板には、高張力アルミ板に特殊な熱処理を施した上、腐食防止などに優れたアルマイト処理を行っている。特殊設計されたステンレス製ケースに入れ、柔らかく、美しい音が響くよう工夫されている。材料も厳選し、四季を通じて変わりなく、美しいメロディーが奏でられるという。

一ノ瀬橋はもともと、「小滝橋」として篠山川と宮田川の合流地点に架かっていた。しかし、82年8月の台風で流出。小滝橋の復旧工事で、一ノ瀬橋が架設されたという。

現在、マレットは大山下自治会で管理。紛失していないか、自治会役員らが日頃から気に掛けている。今でも時折、橋からのダムの景色を眺めながら、音板をたたく子どもの姿が見られるそう。雪岡さんは「今ではメロディー橋のことを知らない人の方が多くなってきているが、小さい子がたたきに来ているのを見るとうれしくなる」と顔をほころばせた。

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