兵庫県丹波篠山市地域おこし協力隊員の2人が、同市犬飼にある築約150年の古民家を、ボランティアなどで都市部から市内を訪れる学生たちの拠点施設にしようと、4月から暮らしながら改修を進めている。40年ほど放置されていたという古民家。掃除や改修などの手伝いが“宿泊費”となり、自由に泊まれる。「可惜夜(あたらよ)」と名付けた古民家で、学生同士でアイデアを出し合い、地域で交流や学びが生まれる施設を造り上げていく。
神戸大学国際人間科学部子ども教育学科の石田歩夢さん(22)と、同大大学院農学研究科の阪下竜喜さん(23)。共に大学に通いながら地域課題の解決に向けた調査や研究を行う、「半学半域型」の協力隊員。
隊員の委嘱が決まった2人は、市内で住居に適した物件を探していた。古市地区の空き家軒数を調査している同大学院農学研究科特命准教授の清水夏樹さんが、犬飼の古民家を所有する男性に取り次ぎ、借りられることになった。
最寄りのJR南矢代駅から徒歩約10分。木造2階建てで、延べ床面積は約200平方メートル、10LDK。朽ちていくいっぽうで、取り壊しも検討していた。「物がたくさんあり、移動もできない状態だった」という家の中を整理。工務店にも依頼し、2人の生活環境を整えた。
2人の生活スペースは基本的に2階の2間のみ。他の部屋も使わないのがもったいないと感じていた石田さんは、市内でイベントの手伝いなどをする学生が前日から泊まれたり、気軽に集まったりできる拠点施設になればと思い立った。
このほど、この古民家の施工を手掛ける市内工務店の建築士や大工らを講師に招き、古民家改修について学ぶワークショップを開催した。建築学を専攻する大学生や専門学生、古民家活用を研究する高校生、カフェ開業に向けて古民家を改修している地元女性ら約15人が参加し、床張りの作業を体験。古民家内の部屋を例に、図面作りにも挑戦した。
共に同大学工学部建築学科3年生の土屋祐介さん(20)は「授業は座学がメインで、現場実習はほとんどない。勉強になる」、南宏樹さん(21)は「頭ではすることが分かっていても、実際に体験してみると違う。大学ではできない貴重な体験になった」と充実感をにじませた。
石田さんは「来た人に自由に案を出してもらい、何か新しい種が生まれていけば。ゆくゆくは起業家や先生などの教育関係者、地域の子ども、お年寄りなど、いろいろな人が集まる憩いの場にしたい」と話している。