20年ぶりの赤ちゃん 高齢者7割超の集落で誕生 住民喜びに沸く「”わが家”の宝物」

2022.09.27
地域

集落で約20年ぶりに生まれた赤ちゃんという蔵之助君を抱える梨絵さんと、俊希さん=兵庫県丹波篠山市市野々で

人口56人、高齢化率71・43%(今年3月末時点)の兵庫県丹波篠山市市野々集落で今年、約20年ぶりに赤ちゃんが誕生した。昨年9月に大阪府から移住した同市地域おこし協力隊員の加藤俊希さん(29)、梨絵さん(31)夫妻の間に生まれた。市内の最東部に位置し、過疎化が著しい同集落の住民たちは「自分の孫が生まれたよう」と、喜びを分かち合っている。

4月に生まれた蔵之助君。生まれた頃は、2人が自宅の蔵の改修に夢中になっていた時期。俊希さんは「蔵は大事なものを保管する場所。名前には、知識や経験、お金、友だちと、大事なものをたくさん蓄えてほしいという願いを込めた」と話す。

集落の住民いわく、蔵之助君は「みんなのアイドル」。梨絵さんは「朝や夕方に抱っこして散歩していると、皆さんが『くらちゃん』『かわいいな』と言いながら寄ってきて、毎回4、5人の人だかりができる。成長を見守ってくれていて心強い」とにっこり。

同集落で暮らす村山紳一さん(72)は「赤ちゃんが生まれたと聞いたときは、すごく感動した。担い手が少ない中、二十数年ぶりの赤ちゃん。みんなが喜んでいた」と語る。

自治会長の澤山伊知郎さん(72)は「妻は『赤子来る 既にイケメン 緑なす』と、蔵之助君で一句詠んでいた」と笑い、「市野々で暮らす人は、全員が家族だと思っている。蔵之助君は〝わが家〟にとっての宝物。過疎化が進む地域で、希望の実体になっている」と顔をほころばせた。

梨絵さんは「自然の中でたくましく、ゆったりと育てていけたら」とほほ笑んでいる。

移住前は、1Kのマンションで暮らしていた俊希さんと梨絵さん。フリーランスでウェブマーケティングなどを手掛ける俊希さんのリモートでの仕事環境や、コロナ禍で進む農村回帰の流れに乗り、自然に囲まれ、広々とした田舎への移住を検討し始めた。

丹波篠山市は、俊希さんが以前勤めていた新聞社の広告営業で回っていたエリア。丹波篠山市が、古民家再生事業に取り組むNPO法人に委託して改修していた築約130年の「旧村山家」の購入者を募集していることを知り、「勢いで」(俊希さん)応募。同家への移住がかなった。

同市の高齢化率は、今年3月末時点で35・31%。

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