兵庫県丹波篠山市の旧城南保育園舎を活用した多世代交流拠点施設、アグリステーション丹波ささやま内に23日、同施設を拠点に活動する大学生サークルが切り盛りするカフェがオープンする。地元農家が丹精した食材をふんだんに使い、地元住民のレシピや知恵を継承しながら、学生が中心となって考案した料理を提供。「お年寄りでも気軽に入りやすいカフェ」を目指す。
神戸大学農学部の実習授業で同市城南地区を訪れたのが縁となり、今年2月に立ち上げた同大のサークル「ルオント」(伊藤菜月代表、13人)のメンバーが運営する。
サークルの活動日にしている第1土曜日の営業を想定。夏休みなどの長期休暇には、営業日を増やすことも考えている。
メニュー監修には、同施設代表理事で、施設内のカフェ「HOKKORI」を営む西尾雅子さん(33)が関わる。地元産ジャガイモを使ったコロッケや、授業で訪問した農家が作っていたというソラマメのマロングラッセ風、施設前の畑で学生が栽培したバジルのソースを生かしたポテトサラダなどを思案している。家庭で消費しきれなかったり、規格外で出荷できなかったりした食材も使い、フードロスの解消にもつなげたい考え。
地元産野菜の直売スペースも設け、地元住民を講師に招いた料理教室の開催なども考えている。
オープンする23日には、同施設でマルシェイベント「てくてくアルクマーケット」が開かれ、森下眞知子さん(81)のレシピをもとにした混ぜご飯「鳥ごぼう飯」を提供する。
同施設理事の小林泰雄さん(80)によると、5年ほど前まで森下さんのレシピで同地区の女性が作っていた鳥ごぼう飯は「市内で開かれる祭りなどのイベントに出店するたびに売り切れていた」ほどの逸品という。
同施設内に、イベント時以外は使われていなかった厨房があり、西尾さんが、学生が学びを深めながら地域とつながれる場になればと発案した。
森下さんは9月と10月の2日間、同施設へ足を運び、学生と交流しながら鳥ごぼう飯の作り方を紹介。うまみ成分が抜けないよう、ごぼうを水につけ過ぎないことや、「ふたを開ける前は『おいしく炊けますように』と、心を込めたおまじないをかける」などと、おふくろの味を再現する秘訣を伝えていた。
森下さんは「また作ってくれる人がいるのはうれしい。私らではやりたくてもできひんし、年がいったらじきに堪能してしまう。分からへんことがあれば聞いてもらえたら」と話していた。
カフェスペースとなる厨房の改修やレイアウトにも学生が挑戦。学校机やいすを配置して懐かしい雰囲気の店内にし、厨房の学生と客同士が顔の見えるレイアウトに。「6」の屋号で家具の製造などを手掛ける荒西浩人さん(52)が指導し、篠山産業高校機械研究部の生徒たちも手伝った。
ルオント副代表で、神戸大3年の長友陽奈さん(21)は「机上でやるのと現場で学ぶのとでは全然違う。農家の方の知恵が共有されておらず、もったいないと感じる。一緒に郷土料理を作り、農家の方と話す機会を多く持てたら」と話す。
西尾さんは「人間関係が希薄になりかけている中、田舎と都会をつなげる拠点に」と願っている。